作品情報・キャスト
第69回カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いた作品。
人生の負け組の社会的弱者の苦悩を監督=ケン・ローチが描く。
心臓病でドクターストップがかかり失業手当を貰おうとしたが一定期間の就活が義務付けられます。就活に挑むものの官僚的で理不尽な役所仕事に阻まれて堂々巡りを繰り返しオンラインでの申請のためコンピューターを学ぶことになる。怒りと不満を募らせる中年失業者ダニエル・ブレイクをデイヴ・ジョーンズが演じる。
ネタバレあらすじ/わたしはダニエル・ブレイク
イギリス・ニューカッスル。
59歳ダニエル・ブレイクは大工の仕事中に心臓発作を起こし倒れてしまいます。
ドクターストップがかかり治療に専念するが国の援助を受けるため申請すると「受給の資格なし」と判断されます。
悪いのは心臓であってマラソンはできないが日常の行動には問題ないためです。
病状は改善の方向に向かっているがリハビリして心機能が回復しなかったら除細動器の手術をすると聞かされます。
役所に振り回される
ダニエルは生ゴミを出さない近所の青年やいつも犬のフンを拾わない者などしっかり注意する性格であるため言い合いになる事もありました。
1時間48分かかってやっと電話が繋がり「不服申し立て」を伝えると再審査で同じ結果が出ないと無理なため義務的審査を申請するよう言われます。
認定人からの連絡が遅いため「求職者手当」の手続きをしようとするが就労可能な場合であるため病気なら「支援手当」の審査を受けてくれと職業安定所で言われます。
専門用語だけでなくさっぱり分からないインターネットを使えと言われダニエルは目眩を起こします。
ディランとデイジー、2人の子供がいるシングルマザーのケイティもロンドンから引っ越してきたばっかりで遅刻してしまい給付金がもらえずもめていました。
それを見たダニエルは「学校が始まる子供たちがいるんだぞ」と一緒になって訴えるが騒ぐなら警察呼ぶぞと追い出されてしまいます。
ケイティは雨漏りが繰り返し起きてる事を大家に文句を言ったら追い出されてしまいました。
仕方なくホームレスの宿泊所に2年いたが子供の精神が限界にきたためロンドンからニューカッスルにやってきたのです。
しかし、役所から紹介されたアパートはトイレが壊れているような酷い場所でした。
ケイティは通信制の大学で学びたいと考えているが転校した子供の精神が不安定で心配していました。
ダニエルはインターネット以外はなんでも出来るからとアパートの修理をし電気代も払ってあげます。
木で作った魚の飾り物をプレゼントしたり大工の知識を活かした遊びを教えると子供たちは笑顔を見せるようになります。
ドクターストップなのに求職活動しろ
不服申し立てをするためダニエルはネットを学び始めます。
仕事は医者に止められているのに週35時間、求職活動を行えと職安で言われます。
支援手当は不服申し立てをする事を伝えダニエルは受給者誓約書にサインすると履歴書を見せるよう言われます。
履歴書の書き方講座に参加するよう言われ、断れば処罰の対象になるため参加します。ダニエルは手続きを進めるだけのために就活します。
またケイティは一生懸命就活していたがそれを証明する事ができず申請は却下されてしまいました。
ダニエルはケイティ親子を連れてフードバンクの列に並びます。
今まで子供たちのために自分を犠牲にしてきたケイティはあまりの空腹に耐えきれず缶詰を開けて口に頬張りました。
惨めだと泣きじゃくるケイティに立派に子供を育てているじゃないかとダニエルは手を握って優しく語り掛けます。
ダニエルは精神を病んだ今は亡き妻を夜中ずっと看病していた事を伝えます。妻の最後の言葉は「海の上を追い風に乗って船で行きたい」でした。
「君には未来がある。大学に行けば羽ばたけるはずだ」とケイティを励ましました。
就活の証拠
支援手当は認められないと認定人から電話が入り落ち込むダニエルだが、自分を気に入ってくれた雇用人からの連絡には医者から止められている事を伝えると「なぜ仕事探しをしているんだ」と責められます。
事情があるとは言え自分でも矛盾していると思うダニエルはどうすればいいのか分からなくなっていきます。
またケイティは生理用品を万引きしてしまい警備員に捕まってしまいます。しかし店側は何も見なかった事にすると解放してくれました。
帰る際に「金に困ってるなら力になる」とアイヴァンと名乗る警備員からメモ用紙を渡されます。
いつまでたっても仕事が決まらないケイティは子供が貧乏を理由にイジメに遭っている事を知りアイヴァンに連絡を入れます。
就活の証拠が不十分だと言われたダニエルは履歴書の書き方が雑な理由で違反審査を受ける事になり手当は支給停止となります。
言い返す気力をなくしたダニエルはそっと立ち上がり何も言わずに立ち去ります。そして家に帰り必要ないものをすべて売りました。
ダニエルは子供の世話をしていると仕事を決めたとケイティが帰ってくるがメモ用紙を見て売春するのだと気付きます。
子供がいるのでアパートでは話せないと思い店まで行って「こんな事はするな。君のために本棚を作ったんだ」と説得します。
しかしケイティは「これで子供たちに果物を買ってあげられる。心が折れそうだから止めるならもう会わない」と去ってしまいます。
結末
もううんざりだと思ったダニエルは求職者手当はやめるから支援手当の不服申し立ての日持だけ教えてくれと職安に訴えます。
義務的再審査には限界がないため、いつになるか分からないし収入が閉ざされてしまうから続けるべきだと言われます。
「もう限界だし尊厳を失ったら終わりだ」と立ち去り職安の壁にスプレーで大きく「私の名前はダニエル・ブレイク。飢える前に申し立て日を決めろ」と落書きして座り込みます。
人々が集まり歓声があげるなか通報を受けた警察にダニエルは器物損壊で捕まります。
何もかも失い部屋に閉じこもっていたダニエルだが「前に助けてくれたから助けさせて」と新聞受けからデイジーの声が聞こえてきました。
ダニエルは謝罪しながらドアを開けると心臓病だったのに助けてくれたんだと知ったケイティが訪ねてきて支援手当回復の申し立てをするため代理人を紹介されます。
しかし、トイレに行ったダニエルは心臓発作を起こして倒れてしまいます。すでに手遅れな状態であり駆け付けたケイティは泣き崩れます。
葬儀の場でケイティは国の制度が早い死へと追いやったのだと言いダニエルが不服申し立てのために用意していた文を読み上げます。
「しっかり税金を払ってきた。私は人間だ。施しは要らない、当たり前の権利を要求する」