東野圭吾「白鳥とコウモリ」原作のネタバレあらすじ&感想結末

作品情報/白鳥とコウモリ

東野圭吾の35周年記念作品・新たなる最高傑作。

1958年生まれ。85年に「放課後」で第31回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年に「秘密」で第52回日本推理作家協会賞、2006年に「容疑者Xの献身」で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、12年に「ナミヤ雑貨店の奇蹟」で第7回中央公論文芸賞、13年に『夢幻花』で第26回柴田錬三郎賞、14年に「祈りの幕が下りる時」で第48回吉川英治文学賞を受賞。近著では「沈黙のパレード」「クスノキの番人」「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」などがあり、ゲレンデを舞台とした「恋のゴンドラ」「雪煙チェイス」などの雪山シリーズも代表作の一つ。
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善良な弁護士が遺体で発見された事件を調べる五代刑事は33年前の殺人事件に行き着き、第一発見者・倉木が被害者と会っていたことを突き止める。

「33年前の事件も今回の事件もすべて私がやりました」

33年前の事件は容疑者として逮捕された者が警察の追求により首を吊っていました。

自供により事件は解決すると思われたが刑事は裏が取れず、加害者の息子は父親の性格からあり得ないと思い嘘を付いているのではないかと疑う、また被害者の遺族も父親のイメージとはかなり外れているので倉木の供述は嘘だと思います。

倉木の供述は真実なのか、嘘なのか、捜査は打ち切られ未知なる迷宮に引き込まれるが五代刑事は自分のミスに気付き・・・

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本を手に取った時に代表作「白夜行」なみに分厚いwwと思ったが読みやすくて話も入ってきやすかった。さすが東野圭吾さん。

 

ネタバレになりますのでご注意下さい

 

ネタバレあらすじ

 

事件

車の後部座席からナイフが刺さったままの弁護士・白石の遺体が発見されます。GPSによりスマホが発見され仕事を終えたあとの足取りが分かってきたがスマホから血痕が検出された事で殺害現場は隅田川テラスでありその後に港区海岸に運ばれたものと思われます。

捜査一課の捜査員・五代は所轄の中町と組み被害者の人間関係を洗うが誰もが恨みを買うような人ではないと言います。

被害者が最初に寄った場所が鶴岡八幡宮の近くのコーヒーショップでした。

愛知県に住む倉木と被害者との通話記録が確認され会いに行くと会った事もないし無料相談だったからかけただけだと言われます。しかし真新しい鶴岡八幡宮の札やお守りを発見すると誰かに貰ったか覚えていないと言いだしたので何かひっかかります。

倉木の息子が東京にいるというので話を聞きに行くと特に情報は得られなかったが聞き込み調査を始めると小料理屋のカウンターで見掛けたと情報が入ります。

場所を確認すると以前訪ねたコーヒーショップから見える場所でした。母親・洋子と娘・織恵で切り盛りしており鶴岡八幡宮の札などを買っては常連さんにあげた事があると言います。倉木が隠したかったのは店ではなく母娘なのではないかと疑います。

 

1984年の事件

洋子は夫・淳二が殺人事件の容疑者として逮捕され留置所で首を吊って亡くなってしまったので警察に敵意を抱いていました。確認すると33年前に金融業者が殺害された事件で公訴時効を迎えたのを機に捜査資料は破棄されていました。

元捜査員に会いに行くと被害者の灰谷は悪徳商法などで荒稼ぎし消されてもおかしくない人物だったと言います。騙されたと気付いた淳二は殴っただけで刺してはいないと訴えていたが刑事の追求に耐えられなくなり首を吊ってしまったようです。

第一発見者は外の公衆電話から通報した被害者の甥と運転手だと知るがその運転手の名前は倉木であり指紋採取された記録が残っていました。

 

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自供

被害者と倉木が東京駅の喫茶店で会っていた事が分かり五代は倉木を訪ねます。

遺体の第一発見者だった事を隠し母娘に会う理由はなんなのか聞くと倉木はすべての事件の犯人は自分だと自白しました。

33年前、倉木は仕事に向かう途中、自転車に乗る灰谷と接触してしまい金を要求され送り迎えまでさせられました。従ったのは会社にバラすと脅され子が誕生したばかりで職を失うわけにはいかなかったからです。しかしあまりにも要求がエスカレートしてきたため脅すつもりでナイフを手にしたが刺してしまったと言います。

指紋などすべて拭き取り逃げようとしたが甥が会社に入るところだったので今来たように装い2人で第一発見者となったのです。過ちで逮捕された者が自殺し自己嫌悪を抱え生きてきたが家族が街を追われて出て行ったと知り探偵を雇って捜すと小料理屋を東京で切り盛りし元気にしていたので安堵しました。それから店に通うようになり母娘と会うことが楽しみになってしまいました。

罪滅ぼしのため自分の遺産をすべて他人に渡す事は可能なのか相談したのが弁護士の白石でした。とても良い人だったのですべて打ち明けたくなり正直に話すと生きているうちに罪を償うのが当然でありそれでは逃げだと言われてしまいます。説得の手紙が届くようになりこのままでは母娘や息子にもバレてしまうのではないかと恐れ消すしかないと思ったのです。

 

疑惑

愛知県警察への配慮から母娘には真実を伝えてはいけないと命じられた五代は憂鬱な気持ちで会いに行きます。検察としては反省していない証拠を掴んでおきたいのです。

確かに定期的に上京するのは気に掛かるが、倉木が恋愛感情などないと言った通り母娘(洋子・織恵)もそんなふうに思った事はないと言います。

それどころか白石の死体が発見された車から倉木の指紋やDNAなど検出されず上京した証拠もありません。また倉木は白石とは偶然野球観戦で出会ったと行っていたが被害者の母娘に訪ねると一人で観戦するほど熱狂的ではないと言います。五代は被害者の母娘にも動機を伝えられないので心苦しくなります。

一方、情状酌量を求めるために協力して欲しいと堀部弁護士から頼まれた倉木の息子・和真は会社にもバレ自分の情報までネットで流されるようになっていました。倉木は迷惑かけたくない理由で親しかった人物について口を閉ざし和真とも会わないと手紙を残していました。

和真は冷静に2つの事件の記事を読み、どう考えても人が良い父親の犯行とは思えないし絶対にあり得ないと思います。

 

被害者・白石の妻子(綾子・美令)は相手が切羽詰まるほど追い詰めたりするとは思えないでいました。被害者参加の許可が裁判所から下り記録を読むと昔の殺人事件から始まっていたので驚きます。

五代はマスコミが記事にした事で母娘(洋子・織恵)も真相を知ったのだろうと思い訪ねていくと倉木からの謝罪の手紙を受け取ったが倉木に対して恨みはなく自分たちは大丈夫だから体に気を付けて罪を償うよう堀部弁護士に伝言を頼んだと知ります。

父親を恨んではいないようだと弁護士から聞かされた和真は話を聞きたいと思い小料理店に会いに行くと「前にも来ましたよね」と織恵に言われます。気付かれていた事に驚き名乗る勇気がなかった事、そして父親に代わって謝罪するが恨んでいるのは誤認逮捕した警察だと言われます。

和真は父親は贖罪のつもりで通っていたのだと知ると加害者の身内がどんな思いをするか知る洋子から体調面を心配されます。

美令は父親が通ったとされる父親が通っていたコーヒーショップに行ってみると事件現場で花を供えるときにこちらをみていた男が小料理屋に入って行くのを目にします。場所は公表されていない事で知るのは加害者の息子なんだと気付き出てきたところを尾行するが気付かれて声をかけられ謝罪されます。

和真は父親が嘘を付いているようにしか思えないと申し訳なさそうに口にしたが自分もそう思っていたので美令も同意します。

 

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迷宮入り

和真は実家に戻ると新居に引っ越した日が5月15日だと分かるが事件を起こしたのが1984年5月15日なので抵抗はなかったのかと気になります。

「何も考えてなかった」と倉木は答えたらしいが時効を待っていたのだとしたら殺した日を知らないわけない、また念願だった新居に引っ越すわけないと思います。

記者から84年の被害者の甥も第一発見者だった事から話を聞きに行くとはっきりとした理由はないが当時は倉木もアリバイがあるんだなと思った事は覚えていました。警察から追求されなかったのはアリバイがあったからではないかと疑うと母娘(洋子・織恵)を救うために冤罪だったことにしようとしたのではと思います。

話を聞いた五代刑事は見事な仮説だと思うが白石を殺害した事件については疑問が生じます。

倉木の部屋から押収した名刺には地元の法律事務所があり、わざわざ上京して白石に相談するだろうかと疑問に思います。勝手に捜査はできないが家族が会いに行けば何か教えてくれるかも知れないと和真に伝授します。

そして小料理屋に行くと店から出てきた男が織恵の元夫だと直感し声をかけます。二人は関係が拗れて別れたわけではなく彼女の父親の事が家族にばれてしまったからだと言います。冤罪だと分かった以上、子の教育を一緒に何が出来ないかと相談していたのだと知り復縁するのか訪ねると再婚しているから無理だと分かります。しかし織恵には心を許せる相手が出来たようだと聞かされ倉木のことではないかと思います。

 

絶望的な推理

和真は父親の名前を伏せて相続を他人に譲るのは可能なのかと相談します。そして父親が相談した内容と違うようだと告げ名刺を見せると1年数ヶ月前に同様の件で相談に見えたが同じように答えたはずだと言われます。

白石に相談するはずないから嘘だと確信するが実家の郵便物をチェックすると1年前に大腸ガンを再発していた事を知ります。

美令は父親のアルバムを調べると知らない婆さんと一緒に映る写真が愛知県であり、父親の古い友人を訪ねると学生の頃に父親の代わりに会わなければならないと何度か高速バスで愛知県に行っていた事を知ります。

戸籍というものを思い出し手に入れると祖父は別れた元の奥さんとの間に出来た子だと知ります。写真に映る婆さんがそうなんだろうと察するが父親が愛知県に行かなくなった年が1884年であり和真に頼んで一緒に調べると殺された灰谷の金融詐欺の被害者だったので驚きます。

もしかして倉木と白石が共犯なのか・・・

 

主犯

倉木はプリペイド携帯で白石を呼び出しそれを海に捨てたと供述していました。プリペイドをわざわざ買って電話するならその辺の公衆電話でもいいのではないかと思った時、五代刑事は倉木を取調べているときに東京の街はいたるところに監視カメラがあるから嘘はバレると告げていた事を思い出します。

すぐに現場近くの監視カメラをチェックすると公衆電話を利用したのはたった1人であり小料理店に飾ってあった写真の男の子でした。それは織恵の息子で元夫と暮らしている中学2年生の安西知希でした。

五代は安西家を訪ねスマホを持っているのに公衆電話を使った理由、そしてどこにかけたのかと問い詰めると知希は白石だと言い自分が殺したと白状しました。

1984年の真犯人は白木だと知って復讐したのだと知希は動機を語りました。

 

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結末/罪と罰

五代は釈放された倉木に同行を願い話を聞きます。

1984年、倉木は仕事に行く途中に灰谷と接触してしまい警察に連絡を入れました。車は警察が調べるために持っていき灰谷はタバコを吹かしながら座っていたので大した事にはならないと思い保健を使おうとは思いませんでした。

治療費だの怪我をして動けないから運転手をやれなど言われ従っていたが警察から事故の痕跡が見られないと言われ頭にきます。

会社に向かい電話番の人と階段を上がるが灰谷が刺されて倒れていました。甥は部屋に入るのが恐ろしいのか外に出ていき通報しました。倉木はなにやら争ったようだと気付き窓を開けると白石が塀を乗り越えようとしているのを目にします。互いに目が合うが倉木は頷いて彼を逃がし指紋を拭きました。

白石とは何回か顔を合わせており契約させられた祖母のために解約したいと訴えていたので絶対取り返した方がいいと伝えていました。短い時間でも灰谷が人を騙す悪人だと把握していたのでおそらくそれが理由の行動だと思います。

 

福間淳二という者が誤認逮捕されたので白石は自首するかも知れない、警察が訪ねてくると予想出来るのでその時は正直に話そうと思ったが淳二が自殺したとニュースで知り驚きます。

白石から電話があり会うと心から反省していたので灰谷が悪人という事もあり「誤認逮捕は警察のミスだし生き返りはしないのだから、これからは生きている人間の幸せを考えるべき」と告げ別れました。

数年後、犯罪者の家族として洋子と織恵が追われる生活をしていると知り支えていたが織恵から告白され、自分も好意を抱いていたが交際できるわけありません。なぜだと追求された事で彼女だけには「自分が白石を逃がさなければ父親は亡くなる事はなかった」と正直に話し謝罪しました。

ある日、白石法律相談事務所をネットで見付け連絡して会いました。今でもずっと反省しているようだったので母娘の事を教えました。そして織恵にも白石の事を伝えたがスマホを盗見した知希が福間淳二の孫だと名乗り会いに行ってしまいます。

知希は人殺しの孫だと言われるようになり母親とは離れ新しい母親と妹は家族とは思えず苦しんでいたのです。倉木は白石の事を教えてからすぐに事件が起こったので織恵かと心配して電話しました。彼女ではなかったが織恵はまさかスマホを見られたのではないかと思い問い詰めると息子から真実を言われ愕然としました。

倉木は知希から詳しく話を聞き、刺された白石は子供の犯行だと隠すために自ら車を港まで運転しスマホを捨て指紋を拭いて後部座席に移ったのだと気付きます。白石が過去の罪を償おうとしたんだと分かり倉木も警察が訪ねてきた事で身代わりの自供をしたのです。

 

感想/白鳥とコウモリ

とても面白かったんですけど後味が悪い。主犯の知希は苦しい生活を強いられたわけでもなく動機は同情を誘うための嘘であり殺人に興味があり日頃からナイフを持っていたなんて・・・。

裏付けが何1つ取れていないのに犯人が自供すれば逮捕され死罪になる事もあるのでしょうか、ちょっと怖いですね。

そして加害者の息子・和真と被害者の娘・美令が接触して一緒に調べるのはちょっと違和感、普通はないと思うし一緒の時間を過ごした事で恋愛感情が芽生えるとはびっくりです。

それにしても和真がかわいそうでならない、身代わりになったら息子がどうなるか倉木は考えなかったのかしら。それに白石の事をなんで織恵に伝えたのか・・・倉木と白石は十字架を背負って償いながら生きなければならない・・と言ってももう亡くなっているけど美令はそんな深く考え込む必要はないと思うんだけどなぁ。