作品情報とキャストの紹介
村上春樹の70万部を超えるベストセラー「東京奇譚集」の一篇「ハナレイ・ベイ」を「トイレのピエタ」の松永大司が映画化。
村上春樹の原作が映画化されるのは「ノルウェイの森」以来8年振りとなる。
シングルマザーのサチはハワイのカウアイ島にあるハナレイ・ベイでサーフィンをしていた息子タカシが亡くなった知らせを受ける。
10年間向き合い続けるサチは海に近付く事が出来なかったが人との出会いを通し息子に会う決心をする。
ネタバレあらすじ/ハナレイ・ベイ
ピアノバーを経営しているシングルマザーのサチは19歳になる息子タカシがサーフィン中に鮫に襲われ亡くなったと知らせを受けハワイのカウアイ島にあるハナレイ・ベイに向かいます。
息子と対面すると片足を失っていました。火葬をお願いすると手形を取らせて欲しいとお願いされ一度は断るが「今は必要なくてもいつか大きな助けになるはず」と言われ受け入れました。
遺骨を買ったあとサチは宿泊費を払いに行くが前払いで受け取っているから大丈夫だと言われます。タカシのサーフボードを持って帰るかと聞かれたが鮫に食われボロボロになっていたので断りました。
タカシの荷物の中には今では使っている人がほとんどいないウォークマンが入っていました。これは押し入れに封印していた若くしてドラッグにはまり亡くなった夫の物であり「お父さんが嫌いならさっさと捨てればいいのに」とタカシに言われた事を思い出します。
「カウアイ島は自然は美しいが人をたびたび襲う、だけど今回のことで島を恨まないでほしい」と現地警察にお願いされたサチは一週間レンタカーを借り現地に留まります。
存在した喪失感
ハナレイ・ベイの海辺近くにある大きな木の下に椅子を用意し海を眺めたり読書をして過ごします。
帰国して葬儀を終えると段ボールを用意してタカシの荷物をすべて詰め込み押し入れに封印します。
タカシの命日になるとハナレイ・ベイに行き同じように過ごし、サチは10年間続けているが海には近付けず手形も受け取ることは出来ないでいました。
ある日、サーフィンを楽しむ二人の若者、高橋と三宅がいました。同じ日本人ということで安く止まれる部屋知りませんかと話しかけられたサチはタカシが宿泊していた場所を紹介します。
10年振りに動き出した時計
サチに面目を潰された酔っ払った元海兵隊は若者二人に八つ当たりし喧嘩となります。
警察から知らせを受けたサチは「馬鹿じゃないの、平和ボケしている日本人のガキだね」と言い放つが「子供を失ったぐらいで馬鹿じゃないか」と言われ高橋が怒ったことを知ります。
翌日、サチは作った弁当を渡し「私の悪口なんて言ってたの」と聞くと高橋に忘れたと言われます。
「息子さんの写真持ってないの、普通持ってるでしょ」と聞かれたサチは「サーフィンの何が面白いの」と聞くとスケボーでブルービニールシートの中を通るだけだが強引に誘われサーフィン気分を味わいます。
若者は帰国する時に「おばさんがいつも座っている近くで赤いサーフボードを抱えた片足の日本人サーファーを見ましたよ、今度話しかけたら」と言われ戸惑います。
10年間、一度も踏み入れた事がない浜辺に入り片足の日本人サーファーを捜すためひたすら歩き回るが目にすることはありませんでした。
サチはタカシの写真を一枚も持っていなかったがタカシが宿泊していた場所でアルバムをもらうとそこには笑顔のタカシがいました。
息子が嫌いだったサチはそれでも愛しており再びタカシを捜すため歩き回ります。なぜ若者に姿が見えて自分には見えないのか、そう思いながら気付くと海に足を踏み入れていました。
「島を受け入れようとしているが島は受け入れてくれないかもしれない」
手形を受け取ってみないかと聞かれたサチだが何の意味があるのだと言います。
夫を戦争で亡くしていた葬儀屋の老婆から「勲章よりも何倍もの価値があると思う」と言われ受け取り手を合わせてみると「あなたに会いたい」とサチは涙をこぼします。
結末「ハナレイ・ベイ」
島の自然の美しさを感じられるようになったサチは帰国して押し入れからタカシの荷物を取り出します。
そしてタカシが生まれたばっかりなのにドラッグにはまって他界した夫のウォークマンに新しい電池を入れてヘッドフォンをします。
そこから流れてくる音楽はハナレイ・ベイをイメージさせるものでした。
偶然にもカフェで「おばさん」と話しかけられ、そこにはハナレイ・ベイで出会った高橋がいました。目の前に座っていた女性がトイレに行くとサチは「女の子とうまくいく方法は3つしかないの。相手の話を黙って聞く、着ている洋服を褒める、できるだけ美味しい物をたべさせる」とアドバイスしました。
それだけやってダメなら諦めなと伝えると高橋はメモを取り始めました。
それぐらい覚えられないのと罵ると「忘れないことが大事なんです」と言われます。サチはタカシの写真を見せてやりました。
タカシの命日、サチはハナレイ・ベイに行き海に入って振り向くと笑顔を見せました。
感想「ハナレイ・ベイ」
せっかく物語はいいのに申し訳ないですが吉田羊はすばらしいですがその他の役者は下手すぎなんでがっかり。
サチは料理人になる夢を諦めドラッグにはまって他界した夫の遺産で子供の頃からピアノを続けていた事もありピアノバーを経営しはじめた。夫が嫌いなんで荷物をすべて押し入れに封印したが育てているうちに夫に似ているタカシも嫌いになり写真は撮らず会話も必要最低限におさえた。
しかし亡くなると確かに存在する喪失感、それでも愛していたのだと気付く。
普通に話しているときは忘れられるので喪失感は消えるかも知れないがやはり1人になると喪失感が押し寄せる。そんなサチの心を癒やしてくれたのはタカシと年が近い若者だったのでしょう。「時間ではなく何をするか」って事でしょうか。見る人によって捉え方は違うかも知れない。
10年間の感情を一気に吐き出す吉田羊さんの演技は圧巻でしたね。