「クスノキの番人」ネタバレあらすじと感想結末/東野圭吾、作家生活35周年

 

作品情報/クスノキの番人(東野圭吾)

作家生活35周年となる東野圭吾さんの作品で多言語翻訳版を同時期に発売。

1958年生まれ。85年に「放課後」で第31回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年に「秘密」で第52回日本推理作家協会賞、2006年に「容疑者Xの献身」で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、12年に「ナミヤ雑貨店の奇蹟」で第7回中央公論文芸賞、13年に『夢幻花』で第26回柴田錬三郎賞、14年に「祈りの幕が下りる時」で第48回吉川英治文学賞を受賞。近著では「沈黙のパレード」「希望の糸」などがあり、ゲレンデを舞台とした「恋のゴンドラ」「雪煙チェイス」などの雪山シリーズも代表作の一つ。

傑作を発表し続ける東野圭吾さん凄過ぎます。音楽でも長くやっている方はいるが毎年ヒット曲を発表しているミュージシャンはやはり数少ないですしまさにレジェントですね。

前作の感動作「希望の糸」から1年も経ってないんじゃないかな・・・。

 

 

解雇された腹いせに罪を犯して逮捕されてしまった玲斗は弁護士を通して伯母から命令を聞くなら釈放させると言われます。

刑務所はゴメンなので従うと、祈れば願いが叶うと言われるクスノキの番人になるよう命じられます。「本当に願いが叶うのか、いったいクスノキにどんな能力があるのか」と疑問に思うが番人を続けていればやがて分かると言われます。

祈念に訪れる人々を通して玲斗は徐々に理解し始め、そして成長していく。

祈念に訪れる人々の不思議であたたかい物語。祈念のルール/●新月と満月の夜しか祈念できない●祈念の内容は極秘●誰かの死を願うこともできる●願いが叶うとは限らない

先に内容が分からないように感想を述べてしまいますが、家系の話がそれぞれあってちょっと退屈に途中感じる事もありましたがそれでもオススメします。

東野圭吾さんの文章力なのか、特に千舟の「念」をしっかりと感じてしまいました。新感覚です。だから千舟が「結末」でどんなに嬉しかったか、本を閉じたときに涙がこぼれていました。そして主人公の成長、千舟の教育、親子のようでしたし「千舟の無念」を代わりに言い放つ時はスカッとしましたね。

しかし、私は身内であってもすべてをさらけ出すのは嫌なのでクスノキは使わないと思います(笑)。

完全ネタバレになりますのでご注意くださいませ

 

ネタバレあらすじ/クスノキの番人

欠陥商品がある事を客に話し不当解雇された少年・直井玲斗は退職金を盗むのが目的で侵入したが警察に捕まってしまいます。これで刑務所かと諦めていると祖母の富美から依頼された岩本弁護士がやってきました。

玲斗の母親は小学生の時に病死し正式な父親はいなかったので高校生まで富美に育てられていました。

本当の依頼人は祖母ではないらしいが今は言えないらしい。岩本弁護士は本当の依頼人からの手紙を読み上げました。

「自由の身になりたいなら、釈放されたあと私のところに来なさい。そして命令に従うこと」

刑務所はゴメンだと思い命令に従うことにすると本当に留置所からでれたので驚きます。指定された場所に向かうと依頼人は伯母の柳澤千舟だと知り今までに二度会ったことがあると言われるが全然覚えていませんでした。

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千舟と玲斗の繋がり

林業をしていた大地主で千舟の祖父から建築業や不動産業が始まりました。授かった二人の子供が女性だった事もあり長女の婿養子としてきたのが千舟の父親である直井宗一でした。

12歳の時に母親が亡くなり継ぐのは自分なんだと認識し、高校生の時に父親は20歳下の女性と再婚して名前も旧姓の直井に戻したがその相手が玲斗の祖母である富美でした。

千舟は祖父母と暮らすようになり大学生の時に祖父が他界し、富美が妊娠している事を伝えられました。そして誕生したのが美千恵であり千舟にとって19歳も下の異母妹ということになります。

自分の父親ではもうないような気がした千舟は自分は柳澤家にいると話すとクスノキの事を祖母から伝えられました。正式な祈念は新月と満月の夜に行なわれ、段取りを管理するクスノキの番人を引き受けてほしい。

大学を卒業した千舟はグループ傘下の不動産会社に就職しました。祖母が亡くなり仕事が忙しかった千舟は自分は結婚できないだろうと決心し柳澤家の当主、そしてクスノキの番人として生きる道を選びました。

40歳になり宗一の三回忌に美千恵が子供(玲斗)を抱いていたので驚きます。美千恵は銀座のホステスをやっていたので妻子持ちの客なんだろうとすぐに予想出来ました。援助を続けてくれる保証がどこにあるのかと怒るが「柳澤家に迷惑かけたくないから縁を切る」と言われ承諾しました。

その8年後、美千恵が乳がんで亡くなったと報せを受けました。玲斗の父親は事業を失敗し家族と共に行方知れずであり援助も玲斗が生まれてすぐにストップしました。千舟が玲斗と会った時あるのは父親の三回忌と美千恵の葬儀の時の2回でした。

 

クスノキの番人になりなさい

柳澤家の敷地内にある月郷神社の管理のため社務室で寝泊まりする事になるが一番大事なのはクスノキの管理だと言われます。クスノキ祈念口から奥に入っていくと草木に挟まれ細い道になり林を抜けると巨大なクスノキが姿を現われます。

根も力強くて太く大樹の脇には巨大な穴が開いていて大人でも通ることができ幹の内側には洞窟のように空間があります。この空間で人々がお祈りをするらしいが願いが叶うと言われているらしい。

昼間は皆が自由に行ったり出来るが夜間は予約制で自分含めて誰も近付いていけないというルールがあります。

ようやく仕事に慣れてきた頃、いつも予約して訪れる佐治寿明の娘・優美がやってきて「父親は何をしているのですか」と聞かれます。

祈念しているとしか言えないので何も話す事はなかったが前にも夜間に侵入してきた女性だと気付きます。また尾行してやってきたのでだめだぞと声をかけると佐治の鼻歌が聞こえてきたので思わず覗いてしまいました。

佐治は母親が認知症で施設に入ってから様子がおかしくなったそうで優美は発信器などを車に取り付け尾行しているうちに「愛人がいるんだ」と疑うが頻繁にクスノキにやってくるので何をしているのか気になるのだと言いました。

 

新月と満月の夜に予約がいっぱい入る事に気付いた玲斗は千舟に訪ねると祈念の効果があるが今の自分に話しても仕方ないようでいずれ分かると言われます。

夜、予約にあった金髪頭の大場壮貴と付き添いで福田守男がやってきます。渡された名刺には「たくみや本舗・常務取締役」と書かれていました。

祈念口の手前まで案内しいつものように「火の始末にはくれぐれもご用心ください。念がクスノキに伝わりますように、行ってらっしゃいませ」と告げます。福田が「しっかり気持ちを込めてお願いします」と言っていたので「本当に願いが叶うのだろうか」と思います。

ただ壮貴は「俺なんか無理に決まってるだろ」と最初から諦めている様子でした。

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柳澤グループの謝恩会

千舟にスーツを買って貰った玲斗は柳澤グループの謝恩会に顔を出す事になります。一緒に向かうときに「新月に祈念する人と満月に祈念する人には何か関係があるのですか」と聞いてみました。

祈念記録を見ているときに時に同じ名字の人が別々の夜に祈念していると気付いたからです。

「いいところに目を付けている、重要なのは祈念の違いは何か」

玲斗は「月郷神社 社務所管理主任」という名刺をもらい驚くが会場に到着すると千舟のはとこから「立派な肩書きだ」と言われ皮肉だろうと思いながらお礼を述べます。

どうも見下され嫌みを言われている気分になった玲斗は場違いだから来なければ良かったと思うがビジネスには疎い玲斗であっても役員たちが顧問というのは飾りだけと位置付け千舟を排除しようとしているのだと察します。現に千舟が開業させ繁盛しているホテルを大型リゾート施設のため閉鎖しようとしている動きが見えました。

クスノキを通じて知り合った者は千舟を通して参加費を払って来ていました。

会話の中から佐治が祈念のきっかけとなったのは遺言の類いを見たから、また壮貴の話から祈念を申し込むときには戸籍がチェックされる事を知ります。そして祈念にやってきた津島老人が「懸命に祈ったけど伝わるかな、子供に。どっちにしろ自分が他界した後の話だ」と夫人に話していたのでクスノキは念じた事を預かる能力でもあるのかと頭をよぎります。

 

祈念の威力/預念と受念

祈念記録をパソコンへ入力しているときに5年前の名簿に「佐治喜久夫」の名前を見付け、美優に聞いてみると父親の兄だと分かります。

調べると喜久夫は介護施設にいたことから病気だったのだと分かるが既に亡くなっていると思うと言いました。それより美優は尾行を続けており女性と一緒にいるのを目撃した事から「離婚したい」と願っているのではないかと疑っていました。

玲斗は好きになりかけている美優を誘い佐治喜久夫が入っていた施設を訪ねます。

重度のアルコール依存症で10年前に入居した頃には精神は安定していたが糖尿病で肝硬変が進んでいる状態でした。5年前に一度だけクスノキ祈念のため外出していたこと、他にも家族がいたが会う資格はないと悔やんでいたこと、クスノキ祈念を紹介した向坂春夫という人物も既に亡くなっているが入居していたことを知ります。

美優は頻繁に会っている女性は何者なのかと気になり、玲斗はクスノキの事を知るため、二人は佐治が何を念じているのか探ろうと決意します。

満月、佐治が祈念にやってきた時、美優は昼間にやってきて盗聴器を仕掛けるが最悪なことに気付かれてしまいました。玲斗に無理言って頼んでいた美優は怒らないでとお願いしスマートフォンの画面を見せて「この女は誰なのか、喜久夫さんと何か関係があるのか」と聞くと佐治は驚きます。

 

喜久夫は長男ということもあり勉強も出来ていた事から後継ぎと育てられていたがピアノの才能があると気付くと憧れていた母親は喜びました。喜久夫は神童と呼ばれるようになり母親は音楽の道に進ませようとしました。

喜久夫は好きでやっているのか、やらなくちゃいけないのか分からなくなるが音大に進むと作曲家を目指し学生寮で暮らし始めました。

しかし連絡が取れなくなったので会いに行くと大学を辞めており役者を目指していました。さすがの父親も激怒し、音楽家として成功して欲しい思いから自分が稼業を継ぐと決めていた佐治はがっかりしました。

それから喜久夫が家に帰ってくることはなかったが母親がちょくちょく出て行っては会っている事は知っていました。結婚して美優が生まれたころ父親が亡くなり葬儀に出るよう伝えてくれと母親に告げたが喜久夫が重度のアルコール中毒で入院していると知らされます。

母親は自分の責任だと言い「迷惑かけないから」と一人で看病していたが、移った介護施設で肝硬変により亡くなったのです。

これで母親は解放されると安堵したが認知症となってしまい最初は家で面倒見ていたが妻子にこれ以上迷惑をかけられないと思い介護施設に入れる事になりました。

佐治は「クスノキに預けました。受け取ってください」と喜久夫から母親宛の開封されていなかった手紙を発見し訪ねたところ事前に調べてくれていた千舟から説明されました。

「新月の夜に念を預ける人の事を預念者と言い、満月が近付けばそれを発するが受け取れるのは血縁関係のあるものだけであり、受け取る人を受念といいます」

預念者が他の者には受け取らせないと伝えていれば不可能だがそうでない場合、血縁者なら受念できると知り佐治は希望したのです。

料金は蝋燭代だけであり受念する方法は相手のことを思うだけでいいと説明されます。

不思議と鍵盤が見えてきてピアノを弾いている喜久夫の想いが伝わってきました。人生を失敗したことで母親を恨んだこともあったが病気になり最後まで見捨てずに看病してくれている母親を見て自分の居場所は最初から存在し母親の息子としてただやりたい事をやってれば良かったのだと気付きました。楽しく弾いていた頃に戻りピアノを母親に聞かせたい、そんな喜久夫の想いが伝わってくると音色が聞こえてきました。

これは兄から母親への贈り物、佐治は母親に聞かせるために何度も受念に来ては鼻歌をスマートフォンで録画し、そして美優が愛人と疑っているのはピアノ講師であり佐治の鼻歌を再現して貰っているのです。

結末/クスノキの番人

理念や信念、使命感などを伝授させるため。

壮貴が最初から「自分では無理だ」と言っていたのは母親は家政婦だったと聞いていたので血縁関係がないのではと気付きます。祈念にやってきた壮貴に話すと血縁関係がない事を14歳の時に父親から告げられていたと言いました。

後継ぎが欲しかった父親は恋人の方か自分の子かも分からず結婚して育てたいと願い出たのです。

血縁関係ないのに祈念したのは疑う人の疑問を取り除くためと気付き「生きていたらどう考えるか想像してみてはいかがでしょう」と伝えました。

すると血縁関係がない事を実は知っていた付き添いの福田が訪ねてきました。

諦めていた壮貴が急に「現社長を第一候補に考えていた、息子の壮貴は見習いから経験させ後継者候補になれるか判断する」と言い始めたため、福田は志が受け継がれたから感謝すると言いました。

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ピアノ講師は佐治ではなく客観性の意見があればいいと言うので、佐治は自分が預念して音楽に自信がある美優に受念してもらおうと思うがクスノキの力はすごいからと悩み出しました。預念者の邪念や雑念も伝えてしまうので娘にすべてを知られるのは当然ながら怖いのです。

預念者の多くは自分が亡くなってから知らせるようにしてあるのはそうゆう事かも知れないと玲斗は思うが佐治は美優に説得され決心しました。

千舟に初めて家に招かれた玲斗は広い屋敷を訪ねます。

「この屋敷をあなたに引き継いでもらいたい」とサラッと言われた玲斗は相続するのは屋敷だけであり土地は柳澤グループだと知らされキーを授かります。

そして隠し部屋にあった150年に続く祈念の記録と蝋燭の製法を教えられこの蝋燭でないと祈念できないと知ります。

 

玲斗は前に番人をしなくていいと言われた事があったがその日は誰も預念していない事を知ります。千舟が自分に何か念を残したのだと気付き予約をない日に受念しました。

役員会議で顧問を降ろされると言っていたが千舟自身が顧問を自ら降りると伝えていた事を知るが無念さも受け取りました。役員会議で千舟は何も言わないだろうと分かり玲斗は忘れものを届けるフリをして会議に入っていき同席しました。

顧問の退きが決定し千舟は出て行こうとしたが玲斗は「念がきれてもいいのですか」と言い放ちます。

「あなた方が自分の色を出すためにやってきたのはすべて千舟の知恵に影響されてのこと、それほどの功績をなかったことにしようとしている。功労者が残した功績を消すのが賢明なのですか」

受念したのだろうと気付いた千舟に「帰りましょう」と言われその場を後にしました。

 

曲が完成したから聴いて欲しいと招待された玲斗は千舟と一緒に佐治の母親(貴子)が入居している介護施設に向かいます。

演奏が始まると貴子は何やら言い始め、よく聴くと「喜久夫のピアノ」と繰り返し涙を流していました。

受念の時に千舟が認知症を発症していることも知った玲斗は「忘れるってそんな悪いことじゃないかもしれませんよ、覚えていなくてもいいじゃないですか」と伝えます。

顧問を退任したのも認知症が原因であり、謝恩会のあとに行なわれるはずだった役員会を忘れてしまいホテルを救う手立てを永遠に自ら失ってしまったからです。

唯一の妹に姉らしい事をしてやれなかった事を悔やんでいた千舟は富美から玲斗が警察に掴まったと知り、美千恵にしてやれなかった事をするときだと思い手を差し伸べたのです。

美千恵に詫びたかった、そして番人である後継者を育てたかったのです。

番人を育てた千舟は旅に出て自ら命を絶つつもりでした。しかしその事も受念で感じ取っていた玲斗は「絶望の世界ではないはず、どんな千舟さんでも自分は受け入れます」と訴えました。

千舟は手帳を開き、「ホテル柳澤の存続が決定しました。あなたの演説が実りましたね」と言いました。そしてススキノの力はなくても玲斗の念を感じた千舟は握手を求め、玲斗はそっと両手で包み込みました。

 

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