実話映画「ライオン」作品概要
サルー・ブライアリーのノンフィクション「25年目のただいま、5歳で迷子になった僕と家族の物語」が原作。
第89回アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネートされ、
ゴールデングローブ賞では4部門、
放送映画批評家協会賞では6部門ノミネートされ各組合賞でも候補に挙がりました
2017年のオーストラリア映画協会賞では最多12部門受賞を果たしました。
ネタバレあらすじ/LIONライオン
5歳で迷子
1986年インド・カンドワ
5歳の少年サルーは兄ちゃんのグドゥと街に出て走行中の汽車から盗んだ石炭を牛乳と交換します。
揚げ菓子が食べたいと駄々をこねるがそんな金はなくお兄ちゃんは「いつか買ってやる」と宥めました。
石を運ぶ仕事をしているシングルマザーの母親カムラはどうやって牛乳を手に入れたかは追求せず「妹シェキラの面倒はお願いね」と言い仕事に出かけて行きました。
兄ちゃんは少しでも家族のためになればと電車にお金が落ちでいないか夜通し探しに行きます。サルーはそんな兄ちゃんの行動はお見通しで自分も付いて行くと言いました。
しかし、5歳のサルーは体力がなく疲れて駅のホームで寝てしまいます。兄ちゃんは「絶対にここから動くな」と忠告し仕事を探しに行きます。
夜中に目を覚ましたサルーはホームに止まっている回送列車に乗ってしまいます。
電車は2,3日後にカンドワから東へ1600キロ離れた西ベンガルのカルカッタに到着しました。
養子
カルカッタの駅は人が多くサルーは大声で「兄ちゃん」と叫びます。
サルーは必死に「ガネストレイに帰りたい」と訴えるがカルカッタはベンガル語が中心であり通じません。歩き疲れたサルーは駅を彷徨っていると路上生活の子供達が段ボールを差し出してくれたのでそこで眠りに付きます。
しかし夜中に売買が目的の大人達がやってきて子供達が逃げ出しました。察知したサルーも必死に逃げ出します。
神様に手を合わせ、お供え物で空腹を満たしながら線路を歩いていると「ヒンディー語分かる?」と優しそうな大人の女性ヌーレに話しかけられます。
ヌーレの家に招かれご飯を御馳走になりフカフカのベッドで眠ったサルーだが訪ねて来た男に売られると察知して逃げだします。
2ヶ月後、海で拾ったスプーンを持って食べている人の真似事をしていると迷子ではないかと気付いた親切な人に保護されます。
写真を撮られ何度も新聞に載るがカルカッタ中心の新聞であり誰からも連絡はありませんでした。オーストラリア人ブライアリー夫婦の養子になるのだと説明されたサルーは「本当にお母さんをさがしたの?」と納得できないが従うしかありませんでした。
1987年。
少しの英語を施設で習ったサルーは飛行機でオーストラリア、ホバードに到着するとブライアリー夫婦ジョンとスーに出迎えられます。
運良く優しい夫婦の養子となりサルーもパパ、ママと懐きます。しかし1年後に養子としてやってきた弟となるマントッシュは精神不安定でした。
20年後
順調に育ったサルーはホテル経営を学ぶため1人メルボルンへ行く事が決定しました。
「あなたは私たちに大きな幸せを与えてくれた」とスーは感謝の言葉を述べ「今後が楽しみだ」とジョンは成長を喜びます。
しかしマントッシュはお祝いの席に顔を出しませんでした。サルーは旅立つ前に「ママをこれ以上悲しませるんじゃないぞ」とマントッシュに忠告しました。
2008年メルボルン。
サルーはクラスメイトのルーシーと恋人関係になります。ある日、クラスメイトとホームパーティーをするとインド料理が並んでいました。揚げ菓子を見たサルーは迷子になった時を思い出し呆然とすると「大丈夫?」とルーシーに声を掛けられます。
様子がおかしいサルーをクラスメイトも心配します。
「生まれはカルカッタではなく迷子だから分からないんだ」とサルーは話し始めます。
住んでいた街は「ガネストレイ」だが、うろ覚えであり存在しないかもしれない。ガネストレイの近くの駅のホームには給水塔がありカルカッタまで記憶が確かなら2.3日かかったと言いました。
当時の汽車の時速を調べて計算し距離の範囲内で給水塔がある駅を捜せばいいんじゃないか。グーグルアースを使えば簡単に分かるんじゃないかと意見が出てきました。
わずかな記憶
2010年タスマニア、ホバート
大好きだった実の母親を思い出し故郷をさがしていたのでルーシーは両親に聞いてみたらと意見を述べるがサルーは断ります。
マントッシュのママへの態度が許せないサルーは「なぜ来たんだ。俺達は兄弟じゃない」と言い放つと感情をコントロール出来ないマントッシュはあばれます。
実の母や兄はおそらく自分を必死に探しているにちがいないと思うサルーは自分だけ何不自由のない暮らしをしている事に苦しみます。
自分は無事だと知らせたいと強く思うサルーはルーシーに「君は君の幸せをつかめ」と言い去ります。
仕事を捨てたサルーはグーグル検索で列車速度や給水塔がある駅を調べるが記憶が曖昧でした。
マントッシュがまたいなくなりスーが体調を壊したとジョンから聞かされるが生母を捜すのはママへの裏切りだと思うサルーは帰りません。偶然会ったルーシーからは「裏切りと思うような方ではないから支えてあげて」と言われます。
優しさに飢えていたサルーは「離れないで」とお願いするが断られます。
サルーは家に帰ると「マントッシュは漁船で働いているが稼ぎはすべて薬代になってしまう」とスーは涙を流します。
二人を養子にして家族として生きれば幸せになれると確信していたが今は迷っているとスーは言います。実の息子だと思って育ててくれたのだと心に響いたサルーはマントッシュを訪ね「本当の兄弟ではない」と発言した事を謝罪しました。
結末/ライオン
もう捜すのは止めようかと迷っていたサルーは範囲内より大きく離れた場所で見覚えのある地形をグーグルアースで見付けます。
近くにある駅からカーソルを動かしていくと給水塔がある駅にぶつかり間違いなく兄とはぐれた場所だと思います。
拡大して見て見ると5歳の時の記憶が一気に甦り自分がよく走って移動していた場所を画面で確認します。
涙を流すサルーはガネストレイだと思っていた故郷の名前が「ガネッシュ・タライ」だと分かります。
サルーはルーシーの家を訪ね「見付けたよ。帰りを待ってて」とお願いすると抱きしめられます。
裏切りかと思い今まで言えなかったと正直話すと「立派になった息子を見せたい」とスーとジョンは喜んでくれました。
25年振りの親子の再会
2012年 インド、カンドワ
サルーは電車を降りると迷うことなく家の方向に歩きだします。
家の中を覗くとヤギが一匹いるだけで誰もいませんでした。サルーは通りかかった男性に5歳の時の写真を見せ母親を捜していると訴えるが写真を返されいなくなってしまいます。
男性が戻ってきて付いて来いと合図するのでサルーは後を追うと前方から母親が歩いてきました。
25年振りの再会だが息子の帰りを信じて越さなかった母親もサルーだと気付き二人は抱き合います。
子供の時に出来た傷を母親が説明すると何事かと集まってきた村人は笑い再会を祝福します。
しかし兄グドゥは自分が迷子になった日に汽車にはねられ亡くなった事を知ります。落ち込むサルーだが大きくなった妹シェキラを見て笑顔を見せます。
25年振りに故郷に戻ったサルーはママとパパに感謝の手紙を送ります。
そして幼かったサルーは自分の名を間違えており本当の名前はライオンを意味する「シェルゥ」だと知りました。
2013年、シェルゥは故郷にママとパパを招き母親に会わせました。