「medium 霊媒探偵 城塚翡翠」ネタバレあらすじと感想結末/相沢沙呼の本屋大賞ノミネート作品

 

作品情報/medium 霊媒探偵 城塚翡翠

「このミステリーがすごい!2020年」、「本格ミステリ・ベスト10、2020年」、「2019年ベストブック」の三冠に輝いた相沢沙呼の本屋大賞ノミネート作品。

警察に協力し難事件を解決してきた香月は妹のように可愛がっていた後輩が殺された事件で霊媒師の城塚翡翠と出会う。死者の声を届けたり事件現場に行くと犠牲者が最期に見た光景が見えてしまうので犯人が分かってしまう。

証拠がないので香月は彼女の霊視能力と論理を組み合わせ事件に立ち向かうが、4年前から起きていた連続殺人の犯人が徐々に翡翠に迫っていたのだった。

 

はじめに、

重要人物である霊媒師・城塚翡翠が特殊な能力を持っているので先に説明します。

8歳の時に自分に特殊な能力がある事に気付く。お嬢様で帰国子女。祖母は英国人で霊媒師だった。

普段は少女のような人だが手伝いの千和崎からそれでは説得力がないと言われ相談ごとを聞くときには神秘的な雰囲気をだすよう演じている。

人の最期の間際の景色が見えるが夢のようにぼんやりしているのですぐに忘れてしまう。

「魂の匂い」を感じ取れる。しかし「後悔の匂い」を感じたとしても「何に後悔しているか」は経験則(同じような人と接触)や空気感が必要になる。また人が「誰かから強い恨みを買っている」なども匂いで感じ取れる。

死者の意識を自分の身体に宿す事ができる。その間の記憶はないが感情は強く心に残る。

自分の言葉を信用してもらえず他者から突き放されて育ってきたので、能力を人のための役立てるのが使命と思っているが・・・。

 

 

第1章/泣き女の殺人

これまで難事件を解決してきた推理作家の香月史郎は後輩の結花から霊媒師に会って欲しいと頼まれます。

「女の人が見て泣いている」と占い師に言われてからそばに女性がたっているように感じられ霊媒師の城塚翡翠に相談したいのだと彼女は言いました。

お手伝いの千和崎に案内され神秘的な雰囲気を持つ城塚翡翠と対面するといきなり職業を言い当てられます。

翡翠は結花が敏感な人だと確かめ、スマホで撮影した部屋の写真を見ると結花を部屋の外に出し「彼女が危険だ」と香月に話します。

家の空気感を知りたいというので後日、香月は翡翠と待ち合わせして結花の家を訪ねるが彼女は倒れて息をしていませんでした。翡翠は透明な水滴を見て「犯人は女性、何を捜しているの」とつぶやき貧血を起こします。

それは女性の姿が見えたからであるが「何を捜しているの」とつぶやいたことは翡翠は憶えていませんでした。

今まで同じような相談をしてきた人達が命を落としているので翡翠はなんで助ける事が出来なかったのかと心を痛めます。

香月は知り合いの警視庁捜査一課の鐘場刑事を呼び出し話を聞くと結花は頭を殴られておりベランダから侵入した痕跡があったので空き巣の常習犯が怪しいと知ります。また結花は友人の小林舞衣の同僚である西村から交際をしつこく申し込まれていました。

翡翠は自分の能力を使って犯人を突き止めて欲しいと香月にお願いします。

 

結花の最期が迫っていたから泣いたのか、女性に泣かれたから最期を迎えたのかと気になるが翡翠が無力感を感じたので最期が迫っていたから泣いたのだと思います。

泣く女性が翡翠と同じ能力があるとすれば匂いで人の最期が分かるはず・・・そう考えると空き巣は突発的なもの、夢を見るようになったのは交際を申し込まれる前からなので犯人は違うと思われる。

翡翠は「霊を身体に降ろすから結花から話を聞き出してください」と香月にお願いします。

結花は自分の事を愛してくれていたのかと知った香月はもっと早く受け止めてやれば良かったと思うが翡翠は霊を降ろすたびに苦しみを抱えていくのだと気付き心配になります。

翡翠は自分の能力で結花を更に苦しめたのではないかと落ち込んでいたので犯人は分かったから大丈夫だと声をかけました。

香月は割れたガラスコップの中に眼鏡のガラスレンズの破片を見付け、事件があった日から舞衣の眼鏡が変わったことで「自首しなさい」と告げます。一緒にいた翡翠は「嫉妬」の匂いを感じ取りました。親友関係に見えたが何をやっても結花が注目され嫉妬が積もりに積もって一気に爆発してしまったものでした。

香月は「霊力を論理を用いて現実へと媒介する手伝いをします」と翡翠に伝えました。

 

第2章/水鏡荘の殺人

ホラー作家の黒越は別荘・水鏡荘を購入したが不可解な現象が起こると家族が脅えていました。霊媒師を紹介して欲しいと頼まれた香月は翡翠を連れて向かいます。

日本にやってきた英国人の魔術師が建てたもので完成させてから行方が分からなくなり、住んだ人には不幸が訪れていたが黒越はまったく怖くないので購入したのです。

バーベキューに参加すると黒越の作家仲間達が招待されており、最近世間を騒がせている刺殺体が山奥で次々と発見されている事件の話をしていました。香月はDNAが発見されていないこと、被害者が似ていること、休日に失踪している事から犯人は何かのトラウマを抱える知能犯で社会的地位のある人間だとプロファイリングしました。

何も起きそうにないので軽く酒を飲むと翡翠は寝てしまいます。キャンプをするだけで初めての経験だと無邪気に喜ぶ翡翠を見てどんな人生を歩んできたのかと香月は思うが大鏡に青い目の白人女性が映ってこちらを見ていたので背筋が凍り付きます。

 

翌日、黒越が倒れているのを家政婦が発見します。通報を受けやってきた鐘場刑事は死亡推定時刻は0時から2時だと言います。香月は3時までリビングにいたので犯人は3人に絞られていました。

別所だけなら問い詰める事ができた。なぜなら翡翠が「犯人は別所だ」とすぐに言い切ったからです。罪悪感と恐怖心の匂いを感じたからおそらく突発的な犯行だと分かるが証拠も何もないので問い詰める方法がなく、リビングを通った編集者の有本と由紀乃にも犯行が可能でした。

死体のそばには血痕でマークが描かれていたが、これはおそらく犯人が自分の指紋が付いてしまったので隠すためと思われ洗い流せるところはトイレしかないと鐘場刑事に伝えていました。

愛人関係だった由紀乃が連行されたと知った香月は誤認逮捕だと分かります。部屋に行った由紀乃は既に亡くなっている黒越を見て驚き愛人関係だったことを隠すためにパソコンのメールなどを消去していたが指紋が検出され疑われたのです。

洗面台のミラーキャピネットの鏡の一部が綺麗に指紋が拭き取られておりその上に由紀乃の指紋が二つ残っていたことを聞かされた香月は翡翠の夢を思い出します。

①有本が翡翠の前に来て手を伸ばすと目眩を起こし何も見えなくなる。

②目眩を感じると別所が現われ、手を差しのばし去る。

③由紀乃が来て手を伸ばす。目眩を起こし姿が消えるがしばらくして現われ去る。

この夢は洗面台の鏡からの視点ではないかと気付き、霊が怖かった有本はキャビネットに取り付けられていた鏡を手を洗うときに開いてそのまま出て行き、顔を確認したかった別所は閉じて確認して出て行き、怪異が怖かった由紀乃が開いて手を洗い閉じて去ったと解釈できる。

由紀乃が犯人だった場合は拭いたあとに指紋が2つ付くのは考えられないがこれだけだと有本にも可能性がある。幽霊が怖かったから最初に開けたときに指紋が付き閉じたときに拭き取ったと考えると別所はキャビネットには触らず由紀乃の指紋が付くことになる。

有本と別所なら可能性はあるがパソコンが1時後にロックがかかる事に目を付けると由紀乃は黒越が亡くなってから1時間以内に訪ねたからメールなどを消去できたわけであり、有本が犯人だった場合はリビングの前を通った時間を考えると由紀乃が訪ねたときにはロックがかかっている時間帯になってしまうのです。

由紀乃が捕まっていたことで安堵していたせいか別所は着ていた服など処分せずに持っており黒越と一致するDNAが検出された事で逮捕となります。動機は新書の内容が自分がアイディアを話したものであり盗まれたからでした。

 

第3章/女子高生連続絞殺事件

サイン会に来てくれた女子高生の菜月から事件を解決してくれないかと頼まれます。

菜月と同じ学校に通う女子高生2人の絞殺死体が連続で発見されており、犯人のDNAは検出されず凶器も判明していなかったが痕跡から同一犯だと思われていました。

世間を騒がしている連続死体遺棄事件の犯人はナイフを使うし被害者も二十代女性なのでそれとは犯人は別と見ていました。

事件現場に行くと翡翠はいきなり苦しそうになり「先輩、どうしてそんな事を・・」とつぶやきます。そして「犯人は女性です」と言いました。

被害者が2年生なので犯人は3年生、まさかの女子高生でした。

 

菜月が写真部で被害者と仲が良かった事から訪ねるがクォーターである翡翠を見て生徒たちがかわいいと寄ってきました。

被害者が撮影した写真を見ても部員に話を聞いても特に参考になるような事はなくただ1人の3年生の蓮見綾子と接触しても翡翠は何も感じませんでした。翡翠は菜月と意気投合して番号を交換し喜んでいたが警察から連絡があり菜月の遺体が発見されたと知らされます。

菜月が持っていた写真を見て事件現場だと気付くが小屋にかかっていたハシゴがない事に気付き他の現場も高い場所があった事で犯人は上から写真を撮ってコレクションにしているのだと気付きます。滑り台から被害者が寝かされていたベンチの方にうっすらと細い痕があったがあれはレンズキャップを落とした痕跡だと疑うと綾子は犯人ではないと分かります。綾子が持つカメラはレンズキャップがストラップで繋がっていたからです。

被害者3人の共通点は学校ではなく外部ではないかと気付いたときに近くにある写真屋の娘が3年の琴音だと分かり訪ねて指紋を持ち帰り警察に渡すと一致したと連絡を受けます。

後は警察に任せようとするが琴音が見付からずカメラ部員の吉原と一緒に歩いていたと証言が取れたと連絡を受けます。このままでは殺されると思ったとき菜月が身体に降りていた翡翠から最初の現場と同じ場所だと言われます。

駆け付けてなんとか吉原は助かったが聴取では琴音は笑いながら人を殺したことなど何とも思っていないようでコレクションを是非見てくださいと言いました。

何も憶えていない翡翠だが菜月が苦しみを抱いているようには感じなかったので天国はあるかも知れないと言いました。

 

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最終話/VSエリミネーター

世間を騒がしている連続殺人鬼の正体を突き止める依頼を引き受けた香月は鐘場刑事と連絡を取ります。

最初に山奥で発見された被害者は4年前、別の場所で拘束された状態で刺され失血死するのを長いこと見ていて満足してから遺体を捨てたと思われました。DNAの検出はされず女性の足取りを追っても防犯カメラには映っていなかった。

 

琴音のように罪悪感を抱かない相手では翡翠は感じ取れない事が分かったので今回は殺人犯が分からないだろうと香月は予想します。

現に遺体発見現場に連れて行っても翡翠は何も感じませんでした。

翡翠は初めて会った日から香月は大切な人を亡くしていると気付いていたがこれまで秘密を知って話してしまうと人は去って行くので黙っていました。何か役に立てるかもしれないと思い勇気を持って話すと香月は子供の頃に再婚相手の連れ子である姉が強盗に刺されて亡くなった事があると話します。

その時の犯人はいまだ捕まってはいない、香月が発見したときにはまだ息があったが彼女は何か一生懸命言おうとして亡くなってしまいました。

香月は翡翠が自分の最期が分かると言っていた事を思いだし「この先の捜査は1人でやる」と告げると翡翠は寂しそうにします。

「私のことを想っているのにどうして・・・」

香月は最初から抱いていたが欲求が我慢できなくなりキスを交わします。そして父親が遺してくれた別荘があるから行こうと誘い後ろから抱き締めるが殺害現場では感じるのだと気付きます。

「そうだよ、僕が殺したんだ、もう10人以上はやったかな、君を実験台にしたくてしょうがない」

 

姉が何を言いたかったのか知りたいから呼び出してくれ!!

翡翠を拘束しナイフを手にするが彼女が笑い出したので背筋が凍り付きます。何がそんなに可笑しいのか・・・、翡翠は別人のようにおかしくで声を出して笑います。

「残念ですけど不可能な話です。私は人を弄ぶのが好きなだけで霊なんて呼べるわけないでしょ」

翡翠は洞察力と推理力に優れているだけでありただのインチキだったのです。人間の心理を弄ぶ事が得意な翡翠は初めて会ったときに香月は自分に知られたくない秘密があると見抜いたのです。何を知られたくないのか探るために、観察するために時に女の武器も利用して接近したのです。

すぐに被害者像が自分に似ている事、犯人は遺体を洗い流すようになったのはDNAを警察に採取され念入りに隠蔽するようになったからではないか、結花の死体を見たときに普通は嘆き悲しむのに驚きと偽り、後悔のような異常者の表情を香月が見せた・・・この事から犯人だと気付き自分を殺したくなるように導いていたのです。

「動機は何かと考えていたがすぐに分かりました。あなたはお姉さんを助けたい一心で刺さっていたナイフを抜いてしまったのでしょう。それが原因で失血死したはずです。お姉さんが最期に何を言いたかったのか知りたかったのでしょう」

 

これまでの事件はすぐに答えを導き出し霊視と称して誘導していたのです。

一瞬で推理したなんて信じられない香月はさっさと殺してしまおうと思うが翡翠のスマホは抜き取って電源を切っていたが、いつのまにか自分のスマホは奪われておりポケットに入っていたのはGPSでした。

「警察に協力しているのは自分だけだと思ったの?」

駆け込んできた鐘場刑事に手錠をかけられた香月は何者なんだと聞くと彼女は霊媒探偵と言いました。

 

①最初に会ったときに結花はペーパードリップでアイスコーヒーを作るのにはまっていた事など聞いていた翡翠は現場にあった水滴を見てすぐに氷だと気付く。客人を招いた場合はテーブル席で向かい合って座るはずだが散らかっていて不可能なことから親しい間柄だと分かる。

ガラスが粉々⇒何かを隠すため⇒なぜ?⇒見えなかったから、交際している人がいなかったことから犯人は眼鏡をかけている女性だと見抜いた。

②キャンプの時にお手伝いさんが「新刊読んじゃいました」と言いました。宅配便の包みから取って袋を破って中身を読むのはありえないので黒越が確認して部屋に置いてあったものだと推測できるが死体が発見されたときに新刊が見当たらなかった。

おかしなマークがあったのは新刊を持ち去った事を誤魔化すために描いたものであり持ち出せるのは別所しかいなかった。有本は打ち合わせしているので指紋はその時に付いたものだと言えばいいだけでリスクがある、そして由貴子はうすいワンピース姿でありお茶を入れたり目の前でしてくれたので新刊を持ち出して隠しながらお茶を入れる事は不可能。よって翡翠は瞬時に別所しかいないと気付いた。

③制服はスカーフ留めがない三角タイなので、三角タイをネクタイのように結ばなければならない。2人目の犠牲者の三角タイは落ちていました。ネクタイのように結んでいることから偶然落ちるとは考えられず、年代によって色が違うことから「こっちの色も似合うと思う、結んであげる」と声をかけ自分の三角タイで絞殺したと推理する。

1人目の犠牲者は1年生の時だったので消去法で3年の女子生徒と分かる。

結んであげる姿は別におかしな光景ではないので誰も怪しまなかった。2人目の犠牲者だけはスカーフに足跡が付いてしまったので襟に戻すことは出来ず制服を乱してイタズラ目的のように思わせた。犯人の指紋を採りに行ったときに制服を着ていたことから誰かを殺すのだと気付きGPSを仕掛けていたので現在地を知る事ができた。

 

感想/medium 霊媒探偵 城塚翡翠

騙されるのは間違いないですが何か納得できないな(笑)能力はそのままで普通に香月が犯人で終わってくれた方が推理も素晴らしかったしスッキリしたかも知れない。

霊みたいなものはまったく信じていないので客観的に受け止めるまで時間がかかったし、せっかく受け止めたのにすべて嘘だったとは騙された快感ではなく「信じていた人から裏切られて嫌な気分」に近い。

それに本性を現した翡翠の見下して人を完全に馬鹿にする話し方はイラつかせるし、後味が悪い。まだ翡翠が名探偵みたいに普通に解説する口調だったら良かったかも知れない。

なぜ翡翠をあんな感じ悪いキャラにしたのでしょうね。

メンタリストのように人を見ただけである程度分かる人もいますが、一瞬で推理してそれをインチキ霊媒師としてヒントを与え、更に香月が犯人だとも見抜いた。ちょっとね、無理があるように思えてしまう。香月が何かミスをおかしたりしたわけでもないですし大切な人を過去に亡くしているのはどうやって知ったのだろうか。

 

小説/BOOK
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