「流浪の月」ネタバレあらすじと感想結末(凪良ゆう)2020年本屋大賞受賞作

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作品情報/流浪の月

実力派作家・凪良ゆうによる2020年本屋大賞受賞作品。

滋賀県生まれ。2006年に「恋するエゴイスト」が連載されると2007年に長編「花嫁はマリッジブルー」で本格的デビュー。BL作品を精力的に刊行しデビュー10周年を迎えた17年には初の非BL作品「神さまのビオトープ」を発表。心の動きを描く丁寧な筆致が印象的な実力派で「未完成」、「真夜中クロニクル」、「美しい彼」などが著作にある。

父親が他界しマイペースな母親に捨てられた家内更紗は引き取られた親戚の家でいとこから性的嫌がらせをうけていました。

更紗はロリコンの大学生に誘拐されて2ヶ月間監禁されていた事で世間で一躍有名人となるが虐待や暴行など存在しなかったし、それは以前の家庭で起こっていたこと。

15年後、養護施設で育ち高校を卒業してから彼氏と同居生活していた更紗は偶然にも誘拐犯と出会う。

せっかくの善意を捨てていく、そんなもので救われない。

誰にも分からない真実、恋愛でも友情でもない、それでもそばにいたい。そうすれば未来に向くことができる。

 

ネタバレあらすじ/流浪の月

家内更紗の家庭環境

家内更紗の母親はマイペース過ぎる人で我慢は絶対にしない。昼から飲みたければ酒を飲み、気が向いたときにしか料理はしないしアイスクリームが晩飯になる事もある。

父親は市役所に勤めている事もあり冷静に物事を判断し嫌いな人とでも付き合いが出来ます。母親はとにかく父親とくっついていたいらしくキスも毎日している。

家庭環境の事を友達に話すと信じられないらしく「やばい人の子だから」と変わり者扱いされるようになります。それでも更紗は幸せで母親のように自由に生きて父親のような人と結婚すると考えていました。

しかし、そんな幸せな生活は更紗が9歳の時に終わりを迎える。

父親が病死し母親に捨てられた更紗は伯母の家に引き取られる事に。今まで家庭で普通にやっていた事をするとダメらしく伯母はどんな教育をしていたんだと怒ります。叔父は「子供の前で止めろ」と常識があるようだが母親と仲悪かった伯母は思い出して不機嫌になる。

何より嫌だったのは従兄弟にあたる中学2年の孝弘の目付きが気持ち悪いことだった。それからというもの更紗はすべてに我慢して人に合わせて生活していたため母親は正しかったのだと確信するのです。

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少女の常識が通用する生活

孝弘からの性的イタズラも加わり、家では息が詰まるし食事の味すら感じない。自分を出せるのは公園で一人で本を読むときだけでした。

この公園には一人で本を読む大学生がいて「ロリコンだから誘拐される」と噂されていました。

ある日、話しかけられ「帰りたくない」と口にすると家に来るかと誘われたので「行く」と返事しました。彼の名前は佐伯文、「文でいいよ」と言うので年上の男性に対して戸惑いながらも更紗は文と呼び捨てで呼ぶことにします。

ロリコンだからと言って変態とは限らない。

むしろ紳士的にお世話をしてくれているし自分の中の「常識」を普通に受け止めてくれる。そんな文は母親の「育児書」通りに育てられ炭酸飲料は飲んだことないしお腹いっぱいご飯を食べたこともない人でした。更紗は「変だ」と思うが家庭によって自分の「常識」が通用しないのは身にしみて分かっているので黙っていました。

頭をポンポンされた更紗は父親を思い出し、久しぶりの気持ちのこもった「癒やし」を感じて「更紗って呼んで、ずっとここにいていい」と聞くと文は「いいよ」と言ってくれました。

命の恩人だと感謝した更紗は自分の「常識」を進めるうちに文の規則正しい生活が少しづつ崩れていきます。そして更紗も文のスタイルに合わせて生活する時もあり自分でも変ったと思います。

幸せな生活が続く中で更紗は自分の状況をすっかり忘れパンダを見たいとお願いしてしまったことで文が誘拐犯として逮捕されてしまいました。

更紗は泣きながら文と叫ぶが警察によって引き離されます。心の中で「悪いのは孝弘だ」と思うが文は優しかったと警察やカウンセラーに話し絶望しながら伯母の家に戻りました。

その夜、孝弘が部屋にやってきたので準備していた酒瓶で殴り、「誘拐されて心が不安定」と診断され養護施設に行くことになりました。

 

心にはいつも文の存在

9年間の施設暮らしを終えた更紗は高校を卒業してから就職します。

ネット上に広がっていたので更紗は被害者として有名でした。それは高校を卒業して職場でもそうだったので新しい恋人・亮と一緒に暮らす時に自分の事でいろいろ聞かれるのが嫌だったので仕事を辞めました。

更紗はいつまで経っても「被害者」としてかわいそうな目で見られる事が嫌で、反応しなくなり大人しい人と言われるようになっていました。そして口にした事はないが孝弘を思い出すので体を重ねることは好きではない。

そして亮が「結婚」の話しをするたびに「守るから心配しなくていいよ」と言う。前の恋人にも言われていた事だが言っている事は優しさ・善意なのは分かる。でも自分はかわいそうな人なのか、自分はおかしいのか、誘拐されて15年経った今でも文に「教えて」と問いかけます。

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誘拐犯との再会

亮が出張の日、夜8時からオープンする珍しいカフェに行くと「いらっしゃいませ」の声を聞いてすぐに文だと気付きます。

残業だと偽り店に通うようになるが徹底してコミュニケーションを避けている様子が伺えるので覚えているか聞くことが出来ませんでした。

文はロリコン、だけど必ず成長して大きくなるから愛しても必ず失うことになる。そんな文の苦しみを今は理解出来ます。

どうか文が幸せでいますように、それと自分の事を忘れないでほしいと更紗は願います。

 

ある日、店に行くと亮がやってきたので驚きます。亮は最近様子がおかしくなった更紗を心配してアルバイト先の店にシフトを教えて欲しいと頼んでいたのです。

好きな人が出来たのだろうと疑う亮はいつも以上に優しくなります。そんな亮の仮面を被った笑顔に更紗は少し怖くなります。

祖母が倒れたと連絡があり「一緒に来てくれ」と子供のように情けない姿でお願いされた更紗は分かったと返事し実家に行きます。

ここでも「被害者・かわいそうな目」で見られ居心地が悪かったが、自分の肘に出来た痣を見て亮の従妹から殴られたんでしょと聞かれ驚きます。

前に別れた彼女に暴力を振るって問題になったらしい。また亮の母親は夫の暴力に耐えられなくなり恋人を作って出て行った事から捨てられたくないので帰る場所がない人を恋人に選ぶようになったのだと教えられます。

亮の話と全然違うが自分が知っている文と世間が知っている文は違うのでそれぞれの解釈があるのだろうと思います。

 

異性として見てはいないが心は文に奪われている

文は大人の女性を連れていたし店に行くことはなかったが更紗はいつも検索してしまう。誘拐事件のことは今でも載っていてそれを見ると思い出しあの頃に戻れて癒やされるのです。

しかし、情報がアップされていて確認すると店で働く文が盗撮されていました。

昔に終わっている事件であり文は乗り越えて今では大人の恋人がいる。やっと手に入れた文の幸せを邪魔するなんて許せないと怒りが込み上げ張り込みを開始するが文の恋人に見付かりストーカーだと勘違いされます。

ある日、どうしても気になる更紗は検索を掛けるとまた更新されており犯人が亮だと気付きます。

同僚の子供・梨花を預かった時に二人でカフェに行ったと聞いていたがその時の子供が写っていたので確信します。最初から文の事を知っていたのだと聞くと激怒され殴られます。

殴る蹴るを繰り返され怒りが収まると急に悪かったと優しくなりそのまま抱かれそうになったので孝弘を思い出し近くにあった物で殴りつけ外に飛び出しました。

お金もなく走って逃げる時、気付けばカフェの前に立っていました。

顔が傷だらけだったせいか「大丈夫」と文が声をかけてきてくれたので驚きます。笑顔で大丈夫と答えるが「店にくる」ときかれ15年前と同じように「行く」と返事しました。

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私の居場所

文は最初から更紗だと気付いていたが自分と関わらない方がいいと思い気付かないフリをしていたようです。

更紗は文に恋人がいても嫉妬心はなかったので恋ではないのだと思います。自分が警察にしっかり話さなかったせいで罪が重くなったにちがいないとずっと思っていたので謝罪すると「自分のやりたいようにしただけだから」と文は言いました。

更紗は文を前にして15年振りに母親のように自由にしゃべっている事に気付くが「自由でバカでわがまま」と思われていた事を初めて知ります。

 

「もう2度と手を出したりしないから」と言われ更紗は帰るが亮と付き合うことは出来ないと決心します。

不動産に部屋を案内されている時にどうしても文のマンションが気になり尋ねると文の隣の部屋が開いていたので予算オーバーだったが決めてしまいます。スイッチが入ると止まらなくなり後で後悔するのはDVと似たようなもんだと思います。

そして文が仕事に行っている時間帯に夜逃げ屋さんにお願いして引っ越しを完了します。一人はとても怖いことだが自由だし壁の向こうに文がいると思うとほっとするのです。

 

ある日、公園で眠くなりベンチで寝ていると隣に文が座りました。「なんでここにいるの」と聞いたが逆に「階段ですれ違ったよね、なんでいるの」と聞かれてしまいます。

文の恋人からストーカーだと思われているので変装していたがバレていたようです。でも文は不愉快ではないらしく「ただ隣に住みたかった、自分の居場所だと思った」という説明だけで受け入れてくれました。

ある日、正社員登用の話があったころ亮がやってきます。帰り、どうせ尾行されていると確信していたので怖くはなかったが文と同じマンションに入ったときに手を掴まれ暴力を振るわれます。

通報され警察がやってくるが更紗は話し合うと言いました。「もう2度としないから」と3度目の言葉を聞いた更紗は文との二ヶ月の暮らしは自分と文だけにしか分からないのでその事は説明せず、自分も酷かったから傷付けてごめんと謝罪しもう見捨ててと伝えると子供のように肩を落とし帰って行きました。

 

私は被害者ではない

正しい暮らしをしていた文は母親の育児書を捨てたので今では夜にアイスを食べれるようになったと言います。

しかし恋人とは別れなければならないと思っている、何も変っていない、と言うのでまだ少女が好きで苦しんでいるのだと知ります。

更紗は梨花を一週間預かるが熱を出してしまったので病院に連れて行きます。仕事は休めないしどうしようかと考えていると文は夜が仕事なので昼間面倒見るよと言ってくれます。

文は携帯とカメラをリンクさせ家の様子を見れるようにしました。小さい女の子を預けるのは心配だろと言われ、更紗は相手が嫌がることはしないと真実を知っているから必要ないとカメラを外しました。

 

梨花の母親と連絡が付かなくなります。文と協力しながら面倒を見るが、ある日、文の恋人に腕を掴まれストーカーだと警察に連れて行かれます。

反論が思い付かず、ただ頷く事しか出来なかったが文が「隣に引っ越してきたのは知っているしすべて認めている」と伝えた事で自分の勘違いだったと謝罪されます。

悪い人ではないのだと分かる更紗は彼女と文の間に体の関係がない事を知ります。彼女は自分は女としての価値もないと思っているようで話し合って別れなくちゃと言いました。それは違うと思いながらも更紗は教えることが出来ませんでした。

本社に呼ばれ正社員への手続きかと思ったが誘拐事件の記事を見せられます。そこにはベランダ越しに話す自分と文の写真が載っており取材に亮が答えていました。

更紗は亮に会いに行くと「こっちも自由にやっている」など子供のような事をグタグタ言い始めたんで帰ろうとすると「俺が悪かった。もう取材にはこたえないから友達でいいから戻ってきてくれ」と追いかけてきて腕を掴まれました。

腕を払うと亮は階段を転げ落ち頭から出血します。更紗は救急車を呼ぶが「この人に突き飛ばされた」と亮が言ったため生まれて初めて取調室に連れて行かれます。

 

前に通報があって暴力を振るわれていた事から正当防衛かなと警察は思っていたので安堵するが子供を預かっていてそれを文が見ているという事で保護しに行っていると聞かされます。

ストックホルム症候群ではないと今まで何回も説明していたが今回も言葉が伝わりません。

「あなたは被害者ですから悪くない」といつも受け取られる。

帰っていいと言われ取調室を出ると文は連れて行かれるときに暴れたと梨花から聞いて驚きます。梨花の手を握るが警察の方で保護するらしく離されてしまいます。被害者支援ネットワークのパンフレットを渡された更紗は自分に性的暴力をしていたのは従兄弟の孝弘だと伝えると2階から文が降りてきたので駆け寄り「一緒に帰ろう」と声をかけます。

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結末/流浪の月

「第二次性徴がこない」事に文は悩んでいました。未発達な性器、病院にも恥ずかしくて行けない。学校で体操着に着替えるときや家族旅行の時など神経を使って着替えなければならない。

女性の話題に入っていけず居場所を失い母親からの期待と不安で受験勉強には手が着かなくなり男が目を奪われる女子の唇や胸は自分にとっては脅威でしかなく見ないように努力していました。

大学の時に初めて1人暮らしを始めるが普通の人の道には乗れないのだと悩み続ける。そんな時、性愛の対象に入らない女の子を見て恐怖心から逃れられる事に気付きました。

自分は大人の女性に興味がないから仕方ないのだと思うと楽になっていった。

 

更紗は誰よりも自由で自分の知らない光り輝く世界を教えてくれるので救われ、互いの存在を支え合えている事を確信しました。

逮捕された時に身体検査により家族は知る事になるが早期治療が重要だったため成人を迎えようとしている体には治療しても変化はありませんでした。

しかし打ち明けられない苦しみからは解放された事で心は軽くなり人事のように誘拐しましたと話しました。父親と兄は何で相談してくれなかったのだと悲しんでくれたが母親は事件と病気の事でショックで会いに来ませんでした。

医療少年院を出ると徐々に現実が見えてきます。家族を巻き込んで傷付け、ネットには被害者の更紗の事だけ書かれていて彼女の人生をめちゃくちゃにしてしまったのだと悔やみます。

それでも元気がない日は更紗を思い出して乗り越えていました。人生を賭けて犯した罪の代償は孤独だった。

ある日、ネットを検索していると更紗が現在は乗り越え幸せに暮らしていると書かれていました。彼女を傷付けてしまったのに会えるわけがない、そう思いながらも文は更紗が住んでいる地域にカフェをオープンさせ大学時代に住んでいた部屋と似ている場所に住み始めたのです。

 

週刊誌やネットでは誘拐犯と被害者が一緒に暮らしていると話題になり、それが影響して更紗は会社をクビになり住んでいた場所も退居してほしいと管理人から言われました。

15年前と同じように文はバッシングを受け、更紗には同情の声が集まる。

恋愛ではない、だけど互いに支え合える唯一の人で体で繋がった誰よりもそばにいたいと更紗は思います。

2人は一緒に暮らし始めカフェをオープンするが「あの2人」と噂されるとその度に引っ越しを繰り返しました。更紗はどんな事があっても離れないと決意し、文も「1人じゃないから」どこへでも行こうと思うのです。

 

感想/流浪の月

なんだかな・・・。家に帰りたくない気持ちなどは理解出来るが更紗のような家庭環境で育ったことがないからあまり分かってあげられなかったな。どちらかと言えばちょっと行き過ぎだが文の方の気持ちなら理解出来る。

体を重ねたくないのはやはり孝弘の事を思い出してしまうトラウマからなのだろうか。確かにストックホルム症候群は存在するが更紗と文に関しては違うしそもそも誘拐と言えるのだろうか。

まったく伝わらない、何も伝えても「被害者だから」と言われてしまうもどかしさは読んでいるだけでもストレスを抱えますね。ストレスといえば亮、外面だけで家で威張る人は本当に卑怯者で人間界で一番弱い人だと思う。私は女性に手を出す人は動物虐待する人と同レベルで見てしまうしまったく理解出来ない人です。すぐに被害届出すべきですよ。

誘拐犯と被害者、これが付きまとうからおかしく感じるだけで人生のパートナーとして恋愛ではなくても一緒にいる人はいると思いますよ。

 

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