東野圭吾「透明な螺旋」原作のネタバレあらすじ&感想結末(ガリレオシリーズ10作目)

作品情報/透明な螺旋(東野圭吾)

ガリレオシリーズ10作目にしてガリレオの最大の秘密が明かされる東野圭吾の著書

1958年生まれ。85年に「放課後」で第31回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年に「秘密」で第52回日本推理作家協会賞、2006年に「容疑者Xの献身」で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、12年に「ナミヤ雑貨店の奇蹟」で第7回中央公論文芸賞、13年に「夢幻花」で第26回柴田錬三郎賞、14年に「祈りの幕が下りる時」で第48回吉川英治文学賞を受賞。近著では「クスノキの番人」「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」「白鳥とコウモリ」などがあり、ゲレンデを舞台とした雪山シリーズも代表作の一つ。
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ガリレオシリーズ累計1400万部突破しているシリーズ10作目。

房総沖で男性の銃殺遺体が発見され被害者の恋人・園香が行方知れずとなる。園香が頼っている絵本作家も行方知れずとなるが警視庁捜査一課の草薙は天才物理学者・湯川学の本を参考にして完成させた絵本を発見する。

何の手掛かりもなく細い糸ではあるが湯川学を訪ね連絡を取ってほしいとお願いすると容疑者でないのならと断られるが絵本作家の本名を知ると別の形で協力すると言い出します。

草薙はついに2人の居場所を突き止めるが予想だにしない人物によって逃がされたことに気付く。

 

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完全ネタバレになりますのでご注意くださいませ

 

ネタバレあらすじ/透明な螺旋

 

デザインの専門学校に通いながら生花店で働く島内園香は仕事を終えて帰宅すると母・千鶴子が風呂場で倒れていました。病院に運ばれるがクモ膜下出血で亡くなってしまい頼れるのは母親よりも2回り上のナエさんと呼ぶ人しかいなかったので連絡します。

ナエのおかげで精神的に支えられ無事に1日葬を終えることができました。しばらくして映像関係の仕事をする上辻と出会って交際が始まり一緒に暮らし始めます。

 

失踪した被害者の恋人

園香から行方不明届が出されている上辻の銃殺された遺体が南房総沖で発見される。

園香と連絡は付かず勤務先を訪ねると休職中でした。警視庁捜査一課の係長に昇格した草薙は内海薫と共に所轄の刑事に案内され園香のアパートを訪ねると化粧品などがすべてなかった事で自分の意思で出掛けたことが予想されます。

園香の親友である岡谷真紀を訪ねると日頃からDVを受けていたようで逃げたんじゃないかと言われます。上辻が殺害されたのを岡谷が知らないようだったので可能性はあると同意し頼れる人はいなかったのか聞くとナエという名前が浮上します。

上辻を調べると関わった人達は全員が口を揃えるように嫌な人で関わりたくないと証言します。パワハラが問題となり更に注意した社長と喧嘩となって仕事を辞めた事がわかると園香の部屋に転がり込んだのもその頃だと判明します。

園香がDVに耐えられなくなり殺害したのだろうかと疑うが上辻が失踪した時には岡谷と旅行していたのでアリバイがありました。

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重要人物

園香の部屋から「アサヒ、ナナ」の絵本が3冊見付かり、園香がナエは絵を描いていると岡谷に話していたことでナエとはこの絵本作家の事ではないかと思い調べると本名が松永奈江だと判明します。

匿っている可能性もあるのでナエを訪ねると留守だったが防犯カメラの映像から二人は行動を共にしているのだと分かります。薫は園香が働いていた生花店に老婦人が訪ねてきた事を知りナエではないかとピンときて写真を見せるが違うと言われます。

 

上辻の携帯から銀座のママさん・根岸秀美への発信記録があったので草薙は顔見知りだったので訪ねます。

秀美ママは園香をスカウトしていたが上辻から文句の電話があったと話し始めます。しばらくすると今度は支度金で300万用意出来るかと電話があり男を見る目がないのは致命傷だと思い園香を諦めました。

草薙は生花店に訪ねてきたのは派手な人と聞かされていたので秀美ママの写真を見せに行くと勘が当たりました。

今までの聞き込み調査からどう考えても園香はホステスには不向きである事、また上辻が殺害された事を告げても生花店を訪ねた事を言わなかったので容疑者に1人とします。

 

天才物理学者の名が浮上

ナエの絵本でモノポールを題材にした帝都大学の天才物理学者・湯川学の本を参考にしたものがあり草薙は驚きます。

親友の湯川に電話すると母親の認知症が進み父親が1人で面倒を見ているというので横須賀の両親のもとに滞在していると知り訪ねます。

手短に話すと「メールのやりとりしかした事がないし会った事もない、ずいぶん細い糸をあてにしたものだ」と言われます。どうにか策を考えてメールで今何をしているか聞き出して欲しいとお願いすると容疑者でもないのだからと断られるが本名を知ると別の形で協力すると言われます。

 

薫は湯川から電話をもらい失踪している園香の亡くなった母親・千鶴子が働いていた児童養護施設「あさかげ園」に行きたいと頼まれます。車で迎えに行き児童養護施設を訪ねると千鶴子はシングルマザーで「あさかげ園」出身だと分かります。

半年前に画像掲載許諾の有無の抜き打ち調査がありその時に園香に電話したこと、またボランティアで紙芝居を見せにきていた人が絵本を出したような話を聞いたことがあると聞かされます。

 

密告者

薫と湯川はかつてナエが住んでいた場所を訪ねると近所の人から亡き夫のスキー部仲間が所有しているリゾートマンションがあり頻繁に行っていたという情報をゲットします。

スキー人気が離れバブルもはじけ売りに出しても買い手が見付からないと知り園香とナエが潜伏するのにもってこいの場所だと思います。

草薙は薫から報告を受けすぐに向かうが立ち去る様子が防犯カメラに映っており内部情報が筒抜けかと疑うがもし内通者が本当にいるなら一人しか考えられないので動揺します。

草薙は湯川を誘い秀美ママのクラブに行きます。湯川が意味深が質問をして名刺を渡して店から出て行ったので追いかけて呼び止め「園香とナエにリゾート地から離れるよう指示したろ」と問い詰めます。

「ナエと園香は犯人じゃない、そんな人間を追う事自体がおかしい。おまえは秀美ママを疑っているはずだ」

捜査の妨害はしないし絶対に裏切らないからもう少しまってくれと頭を下げられ、草薙は信じて受け入れると告げるが尾行するよう捜査員に命じます。

 

湯川は「閉店後にバーでお待ちしている」と書き込んだ名刺を秀美ママに渡していました。

湯川は「あさかげ園」で画像掲載許諾の有無の抜き打ち調査があったと知り警察でなければそんな事が出来るのは探偵だけだと思います。

写真の中で園香が抱いていた人形に目を付け調べると千鶴子のお下がりだと分かり彼女が「あさかげ園」出身だった事から依頼人は人形を作った千鶴子の母親ではないかと推理していました。

人形の服を脱がせると背中に「望夢」と書かれてあり秀美ママの店の名前が「ボウム」であったことから確信に変っていました。

 

孫娘を守るため

秀美は弘司の子を出産するが彼が脳内出血で急死しとてもじゃないが1人で育てられる経済力もないので「のぞみ」「のぞむ」、男女、どちらでも名付けられる名前を人形に書いて「あさかげ園」の門の前に置き去りにしました。

弘司の知り合いの人からホステスに誘われ少しずつなれていくとパトロンたちのおかげで店は大きくなりました。60際を過ぎた頃に乳がんを切除し70歳になると引退を考えるようになりました。

そんな時「あさかげ園」の公式ページに自分が作った人形を抱える園香を見て探偵を雇ったのです。同居しているという上辻に正直に話すと人形は母親の形見で持っていると聞かされ亡くなったのだとショックを受けます。

孫娘に会いたいと上辻にお願いすると園香が「お婆ちゃん」と呼んでくれたのでとても幸せでした。しかし会う機会が徐々に減っていきついには会えなくなったので我慢できず調べるとDVを受けているのだと分かったのです。

「別れを告げると殺されるかもしれない」と園香に言われかつて交際していた男から預かったままになっている密造銃を思い出しそれで射殺したのです。

園香が失踪しているのは警察から何も聞かれないため、そして自首するのを待っているのではと湯川に言われ秀美ママは自分が殺したと供述しました。

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結末/透明な螺旋

秀美ママが自白したと薫から報告を受ける湯川は彼女は園香が孫だという事は伏せているのだと知ります。ホステスにスカウトしていた女の子がDVを受けていると知り守りたかったのだと供述していました。

秀美は孫娘を親友と京都へ旅行に行かせるが自分と一緒だと上辻には伝えさせました。園香が体調悪くなったので迎えに来て欲しいと上辻を呼び出し崖に案内して射殺し海に落下させたのです。

教えてくれた薫に湯川は「ナエ(松永奈江)は僕の実の母親だ」と教えます。

 

湯川は秀美ママに自首するなら園香と会話させてもいいと説得し、園香から電話をかけさせるようナエに指示していました。

園香に会いに行き秀美が自首する前夜に電話で会話した事は知っていると告げます。

湯川は人殺しの孫にさせないために秀美は関係を伏せたのかと思ったがそっちの方が「都合」がいいからだと推理しました。

「これから警察にいろいろと聞かれ打ち明けたくなるかも知れないが誰も幸せにならない。君が詐欺罪に問われる事は望んでいないし彼女に詫びる気があるなら口を閉ざすべき」と言い部屋を出て行きます。

 

園香は幼くして児童養護施設で亡くなった友達の代わりに人形を大事に持っていると母親から説明されていたので人間違いだとすぐに分かりました。

しかし上辻が銀座ママのお金目当てで養子縁組になるよう言ってきたのです。断れば暴力を受けるので従っていたが本当の孫だと思い金銭面でも援助してくれるようになり申し訳なくて会うのを断り始めると激しく暴行を受けました。

別れを決心し秀美には真実を打ち明けお金を返す気でいたが急に家に秀美がやってきたのでDVを受けている事を白状しました。なんとかするから気晴らしに旅行に行くよう勧められるが帰ると何度か上辻に電話したあと捜索願を出すよう言われ殺したのだと分かりました。

とんでもない事をしてしまったと膝から崩れ落ち「今は何も話せないけど遠くに行きたい」と尋ねてきたナエにお願いしました。そして電話するよう言われ秀美にかけると自首するけど関係性は伏せるよう指示され、今まで幸せだった事を感謝されました。

苦しくて警察にすべて話そうと決心していたが湯川に誰も幸せにならないと言われ黙っておくことにしました。

 

感想/透明な螺旋

湯川くん、秀美が祖母ではないかと推理するまでは納得いくが園香が騙しているとどうして分かったの?さすがにちょっと無理があるような気がする。

最初のプロローグのせいでずっと絵本作家が祖母だと思い込んで読んでいましたよ、やられましたよ東野圭吾さん、ペコリ。そして上辻は本当にクズ人間ですね。言葉の暴力も許せないけど女性に手を出す男は全く以て理解出来ないし許せない。

それにしれもガリレオの秘密が明らかにって・・・それだけかと正直思ってしまった。今までのガリレオシリーズでもちょいちょい出てくるのなら分かるけどさ。

秀美はもしかしたら園香を信じ孫娘だと思い込む方が悩みが吹っ切れて幸せなのかもしれないが虚しさが残りますね、涙。園香はずっと重い十字架背負って生きていくのでしょう。