作品情報・キャスト
直木賞作家・辻村深月の同名小説を「春待つ僕ら」などの平川雄一朗が映画化した感動的なファンタジードラマ。
「不能犯」や「ユリゴコロ」など映画界に欠かすことの出来ない存在となった松坂桃李が2012年に初主演を飾った作品です。
松坂桃李が演じる高校生・渋谷歩美は死者と1度だけ再会させる事が出来る使者(ツナグ)の仕事を引き継いで欲しいと祖母に言われ勉強しながら3組の願いを叶える。
先にちょっと感想を書かせていただく
感想/ツナグ
映画を見る前に思ったことは「1回だけ誰と会いたいか」と自分に置き換えて考えてみるといない事に気付きました。
大切な人を失った事がないのは「幸せなこと」とも言えるが「たった1回だけ」の再会で立ち直り前に進めるものなのだろうか。
ファンタジードラマ映画と言えば有村架純さん主演の「コーヒーが冷めないうちに」が一番最初に思い出されます。とても感動しましたが娘が亡き母親と再会したときに離れたくないとしがみついて号泣するシーンがあるがまさにそうなってしまうのではないだろうか。
っといっても「現実」として考えてしまったらそもそも再会など不可能なので無意味でしたね^^;。
「ツナグ」だけれども「断ち切って前を向かせるためにつながせる仕事」
この映画の面白いところは一方的ではないという事、ツナグの仕事は依頼があればまず死者に「会う意思があるか」をしっかり確認します。また「愛おしい人に会いたい」が、ありがちだがすべてがそうではなく保身的な人もいました。
そして最後にツナグの仕事をする歩美の両親がなぜ亡くなったかが明かされ、「騙されるもんか」と見てもやはりこの手には最終的には感動させられてしまう。
ネタバレあらすじ/ツナグ
病気で亡くなった母親に会いたい
口が悪い中年男性・畠田は土地を売るための権利書が見つからないので亡くなった母親ツルに会いたいと依頼すると死者(ツナグ)である歩美が高校生だったので嘘くさいと疑います。
20年前にツナグを使って父親と再会していた母親から連絡先を受け取っていたが・・・。
三回忌では亡くなる直前まで母親の病名を伏せていたので今でも息子や親戚から責められていました。
そんな時、歩美から連絡がありホテルに呼び出されるとツルが待っていると聞かされます。
疑いながらも部屋に入ると実体のツルがいたので驚きます。
実は畠田が会いたかった理由は権利書の在処を聞くことではありませんでした。またツルも在処を伝えるがそれが目的ではないと分かっていました。
畠田は長男だからという理由だけで母親の病気を伏せていたがツルはその事を知っていたのか気になっていたのです。知っていたら後悔なく別の生き方をしたかも知れないと悩んでいたのです。
「あんたは口は悪いが優しいのは知っている。幸せだった、ありがとう」とツルは涙を流しました。
息子とうまくいっていない事を相談するがツルが時間が迫っているため「後継ぎに相応しい立派な人だから大丈夫」と言い消えていきました。
畠田は「本物だと騙されるところだった」と憎まれ口を叩き名刺を歩美に渡して帰宅するが数年後に息子の結婚が決まると、20年前にツルがなぜツナグを通して父親に会いに行ったのかなんとなく把握しました。
それは畠田家の跡取りである自分と会わせるためだったのだと。
事故死した親友に会いたい
高校生の嵐美砂は事故で亡くなった親友の御園奈津に会いたいと連絡するとやってきたのが同学年の歩美だったので驚きます。
奈津がジュンヤワタナベのコートを着ている歩美をかっこいいと言っていた事を思い出します。
本当に会えるのかと疑いながら気まずい思いでホテルに行くと奈津は歩美と話せたことに興奮していました。
嵐は泣きながら謝罪するが奈津は「どうしたの」と何も知らないようでした。何事もなかったかのように楽しく時間を過ごすが最後に奈津から伝言を授かっていた歩美からの一言で一瞬にして凍り付きます。
「道は凍ってなかったよ」
演劇部で出会い親友関係となった嵐と奈津。嵐はとてもわがままな生活だが奈津は笑ってなんでも受け止めてくれる優しい人でした。
ある日、嵐は演劇の主役に立候補すると奈津も同じ役に立候補したのでなんか気にくわない気分となりました。
「わたしには適わないよ」と陰口を耳にした嵐は全力で勝ち取ろうと頑張ったが選ばれたのは奈津でした。
心からの謝罪ではあったが、イラついてしまった嵐は学校帰りに2人で水飲み場と呼んでいた一軒家の水道の蛇口を捻って帰りました。
「蛇口を閉めないと坂道の路面が凍って危険だから」と近所では言われていた場所です。
嵐は「まさか、そんな偶然あるわけない」と思うが自転車を乗る奈津は坂道の下で自動車と接触して亡くなってしまったのです。
なんとなく蛇口を捻った姿を見られた気がしていた嵐は路面は凍ってなかった事を知り「私じゃない」と言いたくて会いに来ていたのです。ツナグを使って奈津が自分に殺されたと言うのではないかと恐れたのです。
また「わたし」には適わないと耳にしていたが「あらし」には適わないの勘違いだったと友達の証言で知り、本当に申し訳なくただ謝ることしか出来なかったのです。
しかし奈津が知らないようだったのでその後は真実を語れず楽しく時間を過ごしてしまったのです。
「道は凍ってなかったよ」と言われたという事は蛇口を捻った姿を見られていたという事であり蛇口を閉めたのは奈津だと予想出来ます。
嵐は保身的に会いに行き、親友に戻る機会を自ら失ってしまったのだと気付きます。
一方、嵐から依頼が来ていると知らされた奈津は何事もなかったかのように純粋に親友との再会を喜んでいたが「着ているコートを褒められたよ」と歩美に言われ心が変わりました。
嵐も歩美が好きに違いないと直感し十字架を背負わせるために伝言を頼んだのです。しかし親友を目の前にすると「一時の感情だった」と気付き伝言を託した事を後悔するかたちとなってしまいました。
失踪した彼女に会いたい
サラリーマンの土谷功一は飲んで帰る途中に強風で転んで怪我をした若い女性を目にして救急車を呼びました。
帰ろうとしたが「仕事を探しに上京したばかりでお金を持っていない」と言われ病院まで付きそうと彼女は「日向キラリ」と名乗り連絡先を交換しました。
やりとりをするうちにデートに誘われ映画を見に行くとキラリはポップコーンを美味しそうに頬張って食べていたので土谷は純粋さに惹かれその後付き合うようになりました。
しかし交際して2年後、ポロポーズをしたあとキラリは友達と旅行に行くといって音信不通となってしまいました。
調べると彼女から知らされていた住所はデタラメであり名前も違うことを知るがそれでも心から惹かれていたので事故に遭っていなければいいなと思うだけでした。
7年経った今でも忘れられない土谷は失踪して消息不明となった人でもいいと言うのでツナグに連絡すると歩美から連絡が来たので「亡くなっていた」と知り落ち込みます。
約束の日、現実を受け入れられない土谷は怖くなってホテルを飛び出してしまうが「一生会えなくなる、絶対に後悔する」と歩美に説得され急いで会いに行きました。
キラリの本名は「クワモトテルコ」でフェリー事故で亡くなっていました。
土谷と会った年はまだ18歳で熊本の実家を飛び出して上京していたのです。土谷に心から惹かれていたキラリはプロポーズをされ両親の許しを得て紹介しようと実家の熊本に帰る途中で事故に遭ってしまったのです。
偽りの自分だったのに7年も土谷が待っていてくれているのだと知らされ会う許可を出したのです。
土谷は「旅行に行くときに気をつけてって言ったのに」と涙を流すとキラリも「ゴメンね」と言い涙を流します。
何もしてあげられなかったと悔やむ土谷に「7年も待っててくれたのだと知りすごく幸せ、結婚したかったけどもう待たなくていいからね」とキラリは言い2人はキスを交わします。
帰宅した土谷は「クローゼットの1番下が二重箱になっているから大事な私物を実家に送って欲しい」と頼まれていたので確認すると初めてデートした映画のチケットとポップコーンの箱が出てきました。
結末/ツナグ
高校生の歩美は入院中の祖母アイ子からツナグの仕事を引き継いで欲しいと頼まれ見習い中でした。
ツナグのルールブックを見ながら最初はアイ子と一緒に勉強していきます。50年ツナグを務めてきたアイ子から「引き継ぐと会いたい死者に会えないから今のうちに会っといて」と言われます。
歩美が真っ先に思うのは急に亡くなった両親の事、どちらかに会えば教えてくれるのかもしれない。
本当に会うことなんて出来るのかと信じられないでいたが畠田から依頼を受け「死者に会いたい意思があるか」確認しに行くとツルと会えたのですぐに現実を知ることになります。
憎まれ口を言われたが最後に「ありがとう」と言われました。畠田に何か吹っ切れた様子がうかがえたので自分がしている事は意味があるようだと学びます。
しかし奈津に会いに行ったとき喜んでいたのに「コートを褒められた話」をすると明らかに表情が一変したので気になりました。意味が分からず伝言を頼まれたので「道は凍ってなかった」と伝えると嵐は急変して涙を流しながら謝罪を繰り返していました。
余計なことをしてしまったのだと仕事の難しさを知ります。
どうやって死者と会っているのかとアイ子に質問すると鏡を取り出しました。
所有者だけが鏡を使って死者を呼び出すことが出来るが引継ぐ者がいなければ「ツナグ」の仕事は途切れる事になります。
また所有者以外の人が鏡を見てしまうと所有者と見た者が命を吸い取られる事になります。
歩美はアイ子の兄がお見舞いに来たので「父親が母親を手に掛け、その後自らも命を経ったのは本当か」と質問します。祖父の反対を押し切って両親は駆け落ちしたので葬儀の場でそんな噂を散々聞かされたのです。
「分からないが目に見えているものが真実とは限らない」
土谷から依頼を受け歩美は初めて交渉の場に立ち会いました。鏡を使ってキラリを呼び出すと偽名だったので時間がかかったが鏡から放たれた光が人の形になりました。
キラリは「忘れられるかも知れないけど彼に前に進んで欲しいから会います」と言いました。
約束の時間になっても「現実を受け止めるのが怖い」と土谷がいなくなってしまったので歩美は捜しに行くとばったり嵐に会います。嵐は「奈津と会った事を後悔していない」と生き生きしていました。
土谷を見付けた歩美は「会わないと一生後悔すると思う」と説得しました。対面後、土谷は「絶対にキラリは忘れません」と感謝して帰って行きました。
歩美は「ツナグを引き継ぐよ」とアイ子に伝えると両親のこと話してくれました。
アイ子は息子にツナグを引き継いでもらう際に誰にも言ってはいけないと念を押しました。しかし今では歩美の母親には説明させとくべきだったと後悔していました。
歩美は鏡の話を聞いたときに予想したことではありました。母親が鏡を見てしまったから2人は亡くなったのではないかと。
でもそれは祖母アイ子のせいではないと歩美は思いました。
「父親の浮気を疑った母親が逆上して怒った事が原因」とも聞かされたが、おそらく父親は死者と会っていたのだろう。それに母親は優しいので父親を疑うなんて事は考えられない。
ツナグの仕事だけは聞かされていた母親が夫と義父との関係を修復したくて会わせようとして鏡を見たのかも知れない。歩美はどう考えても「事故」としか思えませんでした。
嵐の心には奈津がいて堂々と演劇の舞台に立ち拍手喝采を受けます。畠田も息子とちょっとずつ関係を修復し土谷はキラリの私物を実家に送りました。
そして歩美は両親には会わないと決意を固め、「ツナグ」をアイ子から正式に引き継ぐ儀式を行ないました。歩美はいつかツナグを誰かに譲りアイ子に会おうと決めたのです。